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【おすすめ】社会を変える方法を知るために読む本、「世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ: エル・システマの奇跡」感想・レビュー

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とても美しい装丁(そうてい)とタイトルに惹かれて、何気なくこの本を手に取りました。

タイトルをご覧になった方は、どんな「音楽」の話だろうと思いますよね。

もちろんオーケストラの話ですが、その内容は衝撃的です。読み終わった時、今まで自分の知らなかった世界を知ることができます。

今回は、筆者が昨年読んで、1番記憶に残っているノンフィクションをご紹介します。

 本の概要:世界的指揮者が生まれた理由

「100年に1人の天才」「クラシック界のスーパースター」と絶賛される若き天才指揮者、グスターボ・ドゥダメル。彼を育て世界に送り出したオーケストラは、ベネズエラの貧困層から生まれたシモン・ボリバル交響楽団である。


1975年、スラムの子どもたちに合奏や合唱を学ぶ場を提供することで貧困・暴力・犯罪から救い出そうと、経済学者ホセ・アントニオ・アブレウの主導ではじまった音楽教育プログラム「エル・システマ」。その取り組みは、やがてこの世に「世界でいちばん貧しい演奏家によるとてつもなく快活で美しいオーケストラ」出現させ、一流の音楽家を次々と輩出し、いまやその取り組みはベネズエラを飛び出し、日本を含む30か国に広がっている。

ノーベル平和賞候補ともされる“社会革命家”アブレウ、そして「エル・システマの奇跡」の全貌を知る一冊。全米でも激賞された好著。

貧困を音楽で解消するという社会的プログラム「エル・システマ」の活動を描いたノンフィクションです。

ベネズエラ出身の世界的指揮者、グスターボ・ドゥダメルと、「エル・システマ」を生み出した経済学者ホセ・アントニオ・アブレウの軌跡を中心に書かれています。

現在、「エル・システマ」の取り組みは世界中に広がっていて、貧困や犯罪の減少に寄与しています。

私たちが知らない世界のこと

私たちは、世界の悪いニュースや悲しいニュースを耳にすることはあると思いますが、「エル・システマ」という素晴らしい活動があることを知っている人は一体どれくらいいるのでしょうか。

この本の著者である、トリシア タンストール(Tricia Tunstall )は米国出身ですが、ベネズエラで行われているこの活動の素晴らしさを知って現地に赴き、綿密な取材の上でこの本を書き上げました。

 

「エル・システマ」の活動は米国やヨーロッパをはじめ、世界中に広がっています。

それはボランティアや慈善活動という意味合いではなく、社会が「貧困」という課題に対して、どう接していくべきかの解決策を教えてくれているからです。 

貧しい子どもたちが触れる文化が、貧しくてはいけない

「エル・システマ」は、一時的なほどこしではありません。貧困にいる人にこそ、上等な教育を。十分な食事を。社会のコミュニティを。与えられるもので人は変わります。貧困という”事象”から、人々を根本的に立ち上がらせる支援です。

日本人がする募金やチャリティーが偽善っぽくみえてしまうのは、届ける相手に対して自分と同じ立場の人間だという感覚を失っているからではないか、と考えさせられました。

南米・ベネズエラ、日本の地球の裏で行われている活動の軌跡をぜひご覧ください。 

起業家やNPO・NGOにこそ読んでほしい1冊

この本のもう1つの魅力は、「エル・システマ」を生み出した、ホセ・アントニオ・アブレウの起業家としての素晴らしさです。 

社会が冷たいと感じた。だからこそ、音楽を究めるという野心と、経済を学ぶという現実的な選択を両立しようと考えた。

-ホセ・アントニオ・アブレウ 

アブレウは音楽に惹かれつつも、それだけでは社会で生きていけないと感じ、経済学も極めます。

夢をみることと、現実を生きることは両立しないと思われがちですが、それを成し遂げているのがアブレウなのです。

アブレウは努力なしで素晴らしい事業をやりとげたわけではありません。お金もなかったし、最初にはじめたオーケストラの練習場所は暑くて狭いガレージの中でした。

そして、貧困の子どもたちに楽器や食事を提供するためには、お金が必要なこともわかっていました。

ボランティアは”恵んであげる”ものですが、アブレウは社会の仕組みの中に「エル・システマ」を実現したのです。

伝統でしばられている社会の中で、真っ向から立ち向かい、新たな仕組みを作り出したアブレウの軌跡は、きっとこれから社会を変えたいと思う人たちの参考になるはずです。

あとがき

出版されたのは2013年と比較的新しく、4時間ほどで読めました。

本を読んだ後は、南米・ベネズエラの貧困層から生まれたシモン・ボリバル交響楽団の演奏を聞いてみたくなります。(実際に鳥肌が立つような演奏です!)

この本に出会えて本当に良かったと思います。世界のニュースは、望まなければ得られず、世界で行われていることに目を向けるきっかけになりました。

タイトルに惹かれた方はぜひ手に取ってみてください。社会の悲しいニュースではなく前向きなニュースを知りたいと思ったとき、これほど良い本はないと思うほどオススメの本です。