
15年の月日を経てついに...!!
小花美穂先生の『Honey Bitter』が全14巻で完結しました。
ずっと待っていたので嬉しい反面、終わってしまって悲しいような。
今回はこれまでのストーリーと、最終14巻のあらすじ・感想をご紹介します!
※最新刊までの情報がネタバレしていますのでご注意ください
これまでの『Honey Bitter』をおさらい
人の心が読める"特殊な力"を持った珠里(シュリ・18歳)は、周りから気味悪がられ、身を潜めるように生きてきた。
高校卒業後、元刑事の叔母・早穂が営む調査室(探偵のようなもの)『OfficeS』で働くことになった珠里は、その"力"を生かして前向きに生きていこうと決意する。
しかし、入社早々男嫌いの元凶である最悪の元カレ・虹原吏己(リキ)と同僚となってしまう。
また、NYで珠里に一目惚れした大学生・陽太(ヨウタ)も押しかけてきて、3人は調査室で一緒に働くことになった。
「アイドルコンサートの脅迫事件」や「SHUグループの後継者問題」など立て続けに大きな案件を解決した『OfficeS』の面々。
過去にDVやレイプ未遂を受けて恋愛恐怖症となっていた珠里だったが、「親友・みのりの浮気調査」と「猟奇的殺人犯の犬誘拐事件」をきっかけに、一途に珠里を想う陽太の愛情に触れ、少しずつ前を向くようになっていく。
そんな折、医学博士護衛の案件が舞い込み、事件は大規模なテロ事件へと発展。
珠里は吏己に助けられながら、テロリスト達を打破することに成功する。
いままで自分の力を疎むだけだった珠里だったが、人を助けることができた自分の"力"をはじめて肯定することができ、吏己に対して同僚としての信頼が芽生えるようになった。(~4巻)
曾祖母さんが治める御神賀の地で、先祖代々の"力"について理解を深めた珠里は、悲しい事件を経て、自身の過去と向き合っていくことを決意する。
大嫌いだった吏己との潜入捜査を成功させ、陽太との未来のために、吏己ときちんと向き合おうとする珠里。
しかし吏己の過去を調査し、本人と話すうちに、感情が欠けてしまうほどの壮絶な生い立ちを知ることになる。
お互いに本心を語ることで、辛かった過去をようやく思い出にできた珠里だったが、吏己の方は複雑な感情を抱いているようだった。(5~7巻)
吏己との過去から一歩踏み出し、陽太と幸せな日々をおくる珠里。
そこへ珠里の従兄弟であり、能力者である圭甫(ケイスケ)がやってきて、珠里の元カレが吏己であることを陽太にバラしてしまう。
「能力者と一般人は一緒にはなれない」と珠里達の中を引き裂こうとする圭甫だったが、陽太は深い愛情で珠里を包み込み、珠里はトラウマを乗り越える。
陽太との恋愛によって"予知能力"が高まった珠里は、次々と事件を未然に防いでいく。
ところが、ある日吏己が銃で惨殺される未来を予知してしまう。(8~9巻)
吏己が惨殺される予知夢を冷静に受け止めることができない珠里。
死を覚悟した吏己に、「死なないで」と懇願する珠里は、吏己が自分を想っていることを知り、その想いを拒むことができない。
"力"の使いすぎで倒れた珠里は、陽太に別れを告げ、ついに吏己を逃がそうと画策する。
2人で飛び乗った飛行機の先で、吏己を残し、1人東京に戻ろうとした珠里。
しかし上手な吏己によって、逆に軟禁され、吏己は1人で東京に帰ってしまう。
そんな中、ついにテロ事件が発生。犯人の要求は、以前組織を壊滅に追い込んだ吏己と珠里を差し出すことだった。(10~12巻)
テロ組織に身柄を拘束された珠里と吏己。
残された人質と偶然巻き込まれた陽太の弟を救うべく、珠里は"力"を高める秘薬を過剰に摂取し、次々と敵の動きを封じていく。
珠里は組織内の不和を利用し、内部分裂させることに成功する。
処刑寸前の吏己を救おうと屋上に向かうが、敵のボスとの乱闘の末、頭を打って倒れる珠里。
自分の予知通りに銃殺される吏己の姿を見ながら、そのまま意識を失ってしまった。
打たれたのは吏己の替え玉だったことが判明して事件は解決するも、そのまま珠里が目覚めることはなかった。(~13巻)
全ての事件と過去を清算した14巻
秘薬の過剰摂取と力の使いすぎによって倒れた珠里は、事件後3ヶ月経っても目覚めない。
「吏己を救えなかった」と思っている珠里を救うため、吏己に病院に行くよう話す陽太。
眠り続ける珠里に、吏己は辿々しくも自分の無事を伝えるが、珠里は目を覚まさなかった。
冬が過ぎ、桜が咲く頃、親友・みのりが見守る中、珠里は意識を取り戻す。
眠りとわずかな覚醒を繰り返す珠里をみて、曾祖母は地元・御神賀の地で珠里を療養させることを決める。
御神賀の地で少しずつ回復していく珠里だったが、声と力を失い、その様子はまるで8~9歳の子供のようだった。
かつて珠里を拒絶した母親は、力のなくなった珠里を介護しながら、まるで普通の子供と母親になれたかのような穏やかな日々を過ごす。
そんな折、東京からみのりや圭甫、陽太、吏己が見舞いに訪れるが、珠里は陽太と吏己のことを忘れてしまっていた。
自分を忘れた珠里に、「待ってるからな」と声をかける吏己。
幼い姿で幸せに笑っていた珠里は、突然、19歳の自分と現実を思い出し混乱してしまう。
吏己が生きていることを知るも、人を銃で撃ち、大切な人たちを傷つけた悲しみを抱える珠里は「消えたい」と母親にこぼす。
涙ながらに珠里の想いを受け止め、懺悔を繰り返す母親に、珠里は子供の頃に失ってしまった母親の温かさを感じる。
2ヶ月後、叔母・早穂の過去を知った珠里は、バスの中でか弱い女の子を救い、「人を助けることで 自分も救われていた」と気づく。
東京を訪れた珠里は陽太と再開し、ずっと消せなかった自分の中の吏己の存在を吐露する。
吏己が送ってきた「図書館の絵」をみて、いままで未来を考えなかった吏己がはじめて自分との未来を考えたことを感じる珠里。
全てを背負って、仕事を続けていく覚悟を決める。
数年後、曾祖母の田舎で『OfficeS』の分室を任された珠里。一方吏己は、北海道の分室を任され、会えない日々が続いていた。
陽太は大学在学中に国家試験をクリアし、警察の幹部候補生として励んでいる。
珠里と吏己は何年も会うことはなく、ただたまに送られてくる図書館の絵だけが、いつか2人に訪れるかもしれない未来を想像させる。
珠里は、今、この日常を大切にしようと、走り続けるのだった。
大人の胸を打つ『Honey Bitter』の感想・考察
14巻は物語のエピローグ的な一冊でした。
1〜13巻のような大きな事件は幕を閉じ、珠里と吏己の内面、そして変化に焦点を当てています。
幼児退行を経て、母親との確執を乗り越えた珠里。
死をそばに置きながら、将来を考えられるようになった吏己。
ずっと特殊な力に苦しんできた珠里ですが、その力を他人のために使うことが、ひいては自分を生かすことになっていた、と気づきます。
恋愛面で明らかにハッピーエンドとは言い難いですが、未来に希望を残す終わり方でした。
DV、レイプ未遂、育児放棄、サイレントベイビーと社会問題を提起するような異例の少女漫画だった本作。
特に主要キャラ2人(珠里と吏己)の過去は壮絶で、だからこそ強烈に惹かれあったのだろうと思います。
第三者からみれば、DVの被害者と加害者の関係の2人。
被害者である珠里のマイナス思考や自虐的な心理描写がすごくリアルでした。
人間不信と信頼を繰り返す中で、言わば人間の闇に光を当てて、希望を浮かび上がらせるような作品だったのではないでしょうか。
小花先生があとがきでも書いているように、最後の闘いで早穂さんが死んで、珠里が『OfficeS』を引き継ぐ、というラストでもしっくりきたなぁと思います。
その場合、真柴さん(早穂を想い続ける刑事)ポジションの陽太と、何だかんだ付かず離れずな吏己に挟まれて、永遠の三角関係みたいな…ちょっと見てみたかったです。
珠里と吏己、2人が簡単に幸せになることはないのでしょう。
それでも、過去にはありえなかった精神的な繋がりを得て、2人の関係は大きく変わることができました。
とにかく陽太が不憫でしたね(笑)
陽太は今までみてきた少女漫画の中でもTOP3に入るくらい良い男だと思います。
サスペンス要素はもちろん、小花先生ならではのギャグとシリアスのギャップが最高に面白かったです。
小花先生、15年間にもわたる連載お疲れ様でした!!
あとがき
絶対に見届けたい作品のひとつだったので、最後までこの物語を読めて感無量です。
クールビューティなのに情緒不安定で泣き虫な主人公と、少女漫画とは思えないドメスティック&バイオレンスに、本当に楽しませてもらいました。
1巻から読むと、それぞれの事件や登場人物の影響で変化していく心理描写がよくわかります。興味のある方は、ぜひこの機会にまとめ読みしてみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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