今回はそんな最強コンビの初長編作『菜の花の彼-ナノカノカレ-』のあらすじと最終巻の感想をご紹介します。
※最新刊までの情報がネタバレしていますのでご注意ください
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これまでの『菜の花の彼-ナノカノカレ-』をおさらい
『菜の花の彼-ナノカノカレ-』は、2013年から2017年まで『マーガレット』(集英社)で連載されました。
2017年8月に全14巻で完結しています。
キャラの心情がとにかく複雑な作品でした。
しかしストーリーは比較的分かりやすい構成になっているので、第一部からダイジェストでご紹介します。
途中まで読んでいた人は、どこから読み始めればいいのか参考にしてみてください。
第一部(1〜7巻)
高校一年生の綾瀬 菜乃花(あやせ なのか)は、中学校の頃に同級生の鷹人(たかと)付き合っていましたがうまくいかず、恋愛に関して心の傷をひきずっていました。
ある日、自分が抱えていた傷を優しく癒してくれる言葉を耳にした菜乃花は、その相手・隼太(はやた)に振り向きざまに告白します。
隼太は、菜乃花の出身校に通う一つ年下の中学生。
彼女と別れたばかりだった隼太は最初は付き合うことはできないと菜乃花に言いますが、菜乃花の強い想いに心を動かされ、二人はすこしずつ距離を縮めていきます。
ところが、友人・優子の彼氏にカラオケボックスに連れ込まれた菜乃花は、偶然再会した元カレ・鷹人にピンチを救われます。
自分以外に恋している菜乃花をみた鷹人は、激情に駆られるまま、菜乃花に無理やりキスしてしまいます。
付き合っていないにしても、元カレとキスした事実を隼太に言うことができない菜乃花。
二人の恋は『鷹人とのキス』を秘密にしたまま、ゆるやかに始まってしまいました。
友人達と訪れたマミー牧場で、過去の記憶と比べて「ぜんぜんちがう」と繰り返す菜乃花は、隼太とすれ違ってしまいます。
しかし逃げずに隼太を追いかけた菜乃花は、自身の気持ちを語り「好き」という気持ちを直接隼太に伝えました。
菜乃花の元カレが気になるようになった隼太は、卒業アルバムから元カレ・鷹人の存在に気づきます。
夏休み、菜乃花にカッコいいところを見せたいと部活に励む隼太と、差し入れをする菜乃花。
隼太は花火大会の日に菜乃花に告白しようと決意しますが、当日、またしても鷹人にピンチを救われる菜乃花を目撃してしまいます。
鷹人と菜乃花がキスしていたことを知り、さらには自分が二度も菜乃花を助けられなかったことで頭がぐちゃぐちゃになった隼太は、調子を崩して部活のレギュラーを降りることに。
一方の鷹人は、自分が今まで思いがけず菜乃花に傷を残していたことを自覚します。
OBの健介から隼太の不調を聞かされた菜乃花は、汗だくになりながら隼太を探しに行きます。
傷ついて感情をぶつけてくる隼太に、菜乃花は優しくキスして「さようなら」を告げるしかありませんでした。
隼太にしたキスを『自分が鷹人に無理やりされたキス』と重ねてしまう菜乃花。
そのタイミングで鷹人から「ずっと好きだった」と告白された菜乃花は、自分の身勝手な気持ちに絶望してしまいます。
一方、部活に復帰し、試合を見に来るという菜乃花との「やくそく」を一縷の望みとして勝ち進んでいく隼太。
絶望した菜乃花は部屋に閉じこもっていましたが、隼太からのメールを受け取ったことで試合会場へ走りだします。
無理がたたって決勝で倒れてしまった隼太。
試合には負けてしまいましたが、病院で鷹人から菜乃花を奪い返し、ようやく「好きだ」という気持ちを伝えることができました。
第二部 前編(8〜11巻)
すれ違いを乗り越えてようやく想いが通じあった菜乃花と隼太。
ところが自暴自棄になって喧嘩沙汰になり進学校を退学になった鷹人が、菜乃花の学校に転校してきます。
二人はまさかの隣の席に。戸惑う二人の前に隼太にそっくりな声をもつ桜治(おうじ)という男子生徒が現れ、過去の関係を知られてしまいます。
友人・千里の不用意な発言から鷹人と付き合っていたことが周囲にバレてしまい、女子からの攻撃に晒される菜乃花。
『運命の恋』に執着する桜治は菜乃花に振られた腹いせから嫌がらせを開始し、菜乃花は学校で孤立するようになります。
さらに追い討ちをかけるように、隼太から親の都合でアメリカに行くことを告げられます。
「行かないで」と感情を顕にする菜乃花。
不安に押しつぶされそうになる二人でしたが、お互いの気持ちを確かめ合うことで乗り越えていこうと誓います。
鷹人はライバルのはずである隼太からの助言で「菜乃花の味方になろう」とするのでした。
次第に鷹人にも友達として普通に接することができるようになった菜乃花。
ところが自分の「好き」が永遠に行き場をなくしたことに気づいた鷹人は、次第に心を病んでしまいます。
桜治に付け入れられた鷹人は、文化祭の後夜祭で菜乃花と心中することを計画します。
事前に鷹人や菜乃花の周りにいた桜治に警戒を抱いていた隼太ですが、桜治に殴られて監禁状態に。
「なくしたものを取り戻す」という桜治は、菜乃花と鷹人を心中させることで二人の恋心を自分だけのものにしようとしていました。
しかし、怯えることなく自分らしく振る舞う菜乃花を前に、鷹人は正気を取り戻します。
煙の蔓延する教室から逃げ出そうとしますが、暴走した桜治に菜乃花は連れ去られてしまいます。
外階段に追い詰められた桜治は、菜乃花を抱えたまま階段から身を投げます。
救おうと手を伸ばした隼太と鷹人でしたが、どちらかが道連れになるという桜治のささやきに、菜乃花は「どっちも掴まないで」と答え、桜治と2人で4階から落ちていきます。
一命をとりとめた二人。
しかし桜治は昏睡状態のまま。菜乃花はここ半年間の記憶を全てなくしてしまいました。
第二部 後編(12〜13巻)
半年間の記憶を失った菜乃花は、隼太のことを思い出すこともないまま、日常へと戻っていきます。
菜乃花に本当のことを教えるべきか迷う優子と千里。
鷹人は友達として普通に接してくる菜乃花に、卑怯だとわかりつつも「やりなおしたい」と想いを伝えます。
以前の関係が嘘のように距離を縮めていく菜乃花と鷹人。
「やり直せるなら、俺を、お前に好きになってほしい」という告白に心動かされた菜乃花は、もう一度鷹人と付き合うことに。
菜乃花の中から消えてしまった隼太は、自分の存在は菜乃花を不安にさせるだけだと、菜乃花に再会することなくそのままアメリカへ渡ってしまいます。
「菜乃花の中にない記憶を踏み台にしてでも、もう一度やり直す」そう決めた鷹人は、以前の過ちを繰り返さないよう気持ちを言葉にするように。
お互いの素直な気持ちを伝え合うことができた二人は、順調に交際を続けていきます。
しかし以前の自分とは違う変化に、次第に違和感を覚えるようになる菜乃花。
自分を何か大きく変えるような出来事があったのか、鷹人と友人・千里に尋ね、なくした記憶の中に隼太の存在があることを教えられます。
隼太を好きだった気持ちが思い出せない菜乃花は、そのまま以前とはちがう鷹人に惹かれていきます。
二年後、高校三年生になった菜乃花たちは受験を終え、卒業を間近に控えていました。
順調に交際してきたはずの二人。しかし鷹人は菜乃花に触れようとする度に『隼太を好きだったもう一人の菜乃花の幻影』を幾度も感じ、躊躇していました。
菜乃花のすべてを自分のものにするため、隼太との思い出の場所である花畑へ向かった二人。
誰か大切な約束をした人がいるはず…と記憶の断片を取り戻した菜乃花でしたが、それでも鷹人を好きになってしまったことを泣きながら伝えます。
ようやく心を通じ合わせることができた菜乃花と鷹人。
しかし、ずっと昏睡状態だった桜治が病院で目覚め、隼太を思い出す鍵は「花畑」ではなく「声」だと鷹人に告げるのです。
最終14巻の結末は?
帰国した隼太と街で偶然再会した菜乃花。
しかし隼太はアメリカで起きた火事で喉を焼いてしまい、菜乃花は隼太の声を聞いても記憶を取り戻すことができませんでした。
隼太は「俺のことはそれほどまでには好きになれなかったんだと思えばいい」と菜乃花に伝え、さよならを伝えます。
菜乃花は「これで安心して鷹人を好きでいられる」と満面の笑顔で鷹人に告げました。
しかし、次第に隼太の言葉に胸を焦がされるような怒りを感じるようになります。
鷹人を好きで幸せな自分。しかしふとした時に、記憶の断片から自分の想いを踏みにじられているような苦しみを感じるのです。
かつての部活仲間と再会した隼太は、自分の言葉が「菜乃花の想い」を踏みにじったものだと気付かされます。
「鷹人だけのものにしてほしい」と鷹人に懇願する菜乃花。
「過去の自分を殺してほしい」と泣く菜乃花に、自分は同じ過ちを繰り返すところだったと感じた鷹人は思いとどまり、桜治の声を聞かせることで菜乃花の記憶を取り戻そうとします。
桜治から「記憶を失った時と同じように飛び降りれば記憶が戻るかもしれない」と唆された菜乃花はそのまま病院の屋上へ。
桜治に囚われたままの菜乃花の恋心を取り戻そうと病院にやってきた隼太は、鷹人に促されて屋上へ向かいます。
「菜乃花に心から笑ってほしい」と願う鷹人は、屋上へ行くことなく、桜治を説得します。
電話越しに懐かしい声を聞いた菜乃花は、振り向いた先に隼太を見つけ、ようやく過去の記憶を取り戻すことができました。
しかし隼太を好きな気持ちと鷹人が好きな気持ち、両方を持っていることに困惑した菜乃花はそのまま倒れてしまいます。
鷹人を好きになった菜乃花はずっと菜乃花の中に残り続ける。
隼太はそれを後悔することなく、菜乃花を受け入れました。
大学生になった菜乃花と隼太。菜乃花は時々、心が2つあるような複雑な感情に苛まれます。
しかし、転勤族で何もなかった隼太の部屋の机の片隅に、かつて自分が渡したメモ帳の花畑がひっそり咲いているのをみて、「『約束』はずっと彼の側で咲き続けていたんだ」と微笑むのでした。
あとがき・感想
2話目からでていた「メモ帳」や「花畑」の伏線が最後にきれいに回収されて、思わず原作者に拍手を送りたくなりました。
でてくる男子が次々と病んでいき、最後まで展開が読めなかった本作。最後は鷹人の気持ちもある意味報われて、素晴らしいラストだったのではないでしょうか。
鷹人派 VS 隼太派でかなり意見が割れていたので、鷹人派からはあまり受けがよくなさそうですが(笑)
ただ単行本を読み返すと雑誌掲載中よりページが保管されて、すこし心理描写がわかりやすくなっていると思います。
また桜治の菜乃花に対する気持ちが断片的には読み取れる程度で、そこまではっきり描かれていなかったのも様々な推測ができて面白いなと感じました。
桃森先生の描くキャラの『絶望した表情』が素晴らしすぎて、少女漫画とは思えないシリアスドラマでしたね。
友人や周囲のキャラを含め一人ひとりの感情が丁寧に描かれていて、この絵柄とストーリーだからこその良作だと思います。
気になった方はぜひ1巻からまとめ読みしてみてください。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました!