これから生まれてくる人にも読んでほしい、伝説的な漫画「BANANA FISH」。
少女漫画というジャンルの中では異例の作風と、魅力的なキャラクターやストーリーで、時代を超えて根強い人気を誇ります。
これから初めて「BANANA FISH」を読む人もいると思いますが、ちょっと待ってください!
今回は「BANANA FISH」を、最後まで楽しむために気をつけて頂きたいことを書かせていただきました。
目次
「BANANA FISH」とは…
1985年から9年間、少女漫画誌「別冊少女コミック」にて連載され、多くのファンを獲得している作品です。
吉田秋生先生は「海街diary」の作者と聞けば思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
しかし「BANANA FISH」は「海街diary」とは遠い、かなりハードなバイオレンスアクションサスペンスです。
ネタバレしない程度にあらすじを紹介すると…
1973年、ベトナムで米軍兵士グリフが突如錯乱し、同僚を射殺した事件が起きた。廃人と化した彼が呟いた言葉は「バナナフィッシュ」
時は流れて、1985年のニューヨークで、ストリート・キッズを束ねる少年・アッシュ・リンクスは、死の間際の男から「バナナフィッシュ」という言葉と、謎の物を委ねられる。
その後、日本から来た少年・奥村英二と出会うアッシュ。その時、バナナフィッシュをめぐるマフィアとの暗闘は間近に迫っていて…
1980年のアメリカを舞台に、ギャングのボス・アッシュと日本人の英二が、マフィアや警察との対立しながら、「バナナフィッシュ」の謎を追いかけます。
初見で「BANANA FISH」を文庫本で読んではいけない理由
さてここからが本題ですが、現在「BANANA FISH」はコミックス全19巻、文庫版全12巻(うち番外編1巻)が刊行されています。
多くの人気の作品が文庫版・完全版として再出版されますが、そのときファンに嬉しいのが、”おまけ”です。
雑誌掲載時のイラストや特別コラムが載っていたり、格好良い装丁デザインもファンにはたまらないですよね。
例によって「BANANA FISH」の文庫版の最後2〜3ページには、作家やコラムニスト・漫画家のコラムが載っています。
「BANANA FISH」ファンなら思わず感動してしまうコラムばかりなんですが、初めて読む方は少し注意してください。
2巻のコラムで、すでに最後の展開がネタバレしているんです!
これでは今後はじめて「BANANA FISH」を手に取った人が、じっくりコラムまで読み込んでしまった時(おそらくそうする人が多いと思いますが)2巻で、あの衝撃の結末を知ってしまうことに…。
これから初めて「BANANA FISH」を文庫本で読む人は、絶対に最後のコラムは本編11巻+番外編1巻をすべて読んでから読んでください!
どれも素晴らしいコラムばかりですので、本編を読んだ後にコラムを読めばより楽しめます。
まるで友達と感想を共有しているような、「BANANA FISH」の世界の余韻により深く浸れること間違いなしです。
すでに単行本や連載当時から「BANANA FISH」を読んでおり、結末を知っているという人は、最初からコラムまでじっくりと文庫本で読み返すことをおすすめします!
連載当時9年間という年月で冗長していた爆発しそうなエネルギーの詰まった作品を、一冊一冊読むごとに感じることができるはずです。
男女ともに多くのファンを獲得した「BANANA FISH」の魅力とは
1少女漫画なのに女性キャラが全く出てこない
ジャンルは少女漫画ですが、この作品で描かれているのは、女は皆無というほど出てこない男の世界。
唯一繰り返し出る女キャラといえば、ジャーナリストの離婚調停中の奥さんくらいです。
それでもなぜ多くの少女たちが魅了されたのかといえば、おそらく主人公2人の性別を超えたノンセクシャルな魅力にあると思います。
時にはアッシュが、時には英二が、性別を凌駕した存在であること。
力あるものに性的に蹂躙されるのは、力の弱いとされる女性であることが多い現実で、アッシュや英二がお互いにヒロインとしての役割を果たしています。
この作品は、全て男のキャラで構成されていても、それぞれの立場・性質が全く異なり、女性的、男性的とくくれない人間の様々な面を描くことで、濃厚なストーリーを紡ぎあげています。
21980年代のアメリカ社会をリアルに描いた緻密さ
ベトナム戦争などの歴史的背景を踏まえて、当時のアメリカ社会が抱えていた様々な問題が色濃く反映されており、物語の核心である「BANANA FISH」の謎に繋がっていきます。
マフィアとの抗争・暴力・薬物・性的虐待などが生々しく、淡々と描かれていあり、ショッキングに感じる人も少なくないでしょう。
これが任侠モノの濃いイラストであれば、ここまで女性ファンを獲得できなかったと思います。
リアリスティックなイラストでありながら、柔らかなタッチの線が、少女漫画らしくないけれど少女漫画らしいイラストとして、ハードな世界を読みやすくしています。
3「同性愛」とはくくれない、友情と恋愛を超えた絆
本作には同性愛的な描写が常にでてきます。
ハードな世界の中でも、特に衝撃なのが、主人公・アッシュの生い立ちです。
物語の進行とともに明らかになる様々なキャラクターの背景を読んでいれば、アッシュと英二の関係が一言では表せないものであることをまざまざと感じるはず。
確かに、同性同士のセクシャルな描写はありますが、心と体の結びつきが全くの別物であることがわかります。
感じ方は読み手にとって様々だと思いますが、読めば必ず、今までにない感情を揺さぶられる作品ですので、同性愛というワードで嫌悪せず読んでほしいと思います。
2018年7月、アニメ化決定!!
2018年7月よりフジテレビ系ノイタミナ枠でアニメ化が決定しました。
アニメ化に対する作者のコメントが面白い(笑)
確かに「BANANA FISH」は30年近く前の作品で、絵柄も少し古いですが、その年月を感じさせない真新しさを感じるキャラクターデザインに期待が高まります。
監督が「Free!!」の内海紘子さん、シリーズ構成が「いぬやしき」の瀬古浩司さん、さらにアニメーション制作が「ユーリ!!! on ICE」のMAPPAということで、アニメも名作になる予感しかしません。
アニメ「BANANA FISH」は、2018年7月よりフジテレビ「ノイタミナ」で放送されるほか、Amazonプライム・ビデオで日本・海外ともに配信されます。
海外にいる、かつての「BANANA FISH」フリークもぜひ見てみてください。
あとがき
こんな素晴らしい作品が読める時代に生まれてよかったなぁと思う反面、 手塚治虫先生の時代から今まで、 毎年のように面白い漫画が生まれているのがすごいですよね。
昔からのファンはもちろん、「BANANA FISH」は間違いなくこれからもずっと残る作品ですので、出版社さんぜひコラムの前に「ネタバレ注意」の注意書きをお願いします(土下座)
最後までご覧いただき、ありがとうございました!