東京から地元に帰ってきたウェブデザイナーの宗太と、子どもに変身するたぬき・ポコとの日常を描いた漫画「うどんの国の金色毛鞠」。
舞台の香川はもちろん、瀬戸内海の島々の魅力も余すところなく楽しめる地元愛溢れた作品でもあります。
そんな「うどんの国の金色毛鞠」が全12巻で完結。
最終回は1巻からは想像もできないほど切なく、温かいラストになっていて「ぜひ大勢の人に読んでほしい!」と思う良作でした。
今回は最終12巻のあらすじと、原作ファンの感想をご紹介します。
※最新刊までの情報がネタバレしていますのでご注意ください
これまでのあらすじ
東京でウェブデザイナーとして働いていた宗太(30歳)は、父親の死後帰ってきた実家のうどん屋で、釜の中でねむりこける不思議な子どもと出会います。
なんとその子どもは、地元の伝承で有名な化け狸でした。
いつの間にか始まった二人暮らしで、毎日元気いっぱいに駆け回るポコ。
姉の凛子や親友の中島も巻きこんで、不器用ながらも温かい共同生活がはじまります。
宗太は、東京の会社を辞めて地元に帰ってくることを決意。
東京の上司・ダーハマさんの紹介で小豆島の学さんと雪枝さんと仕事をすることになったり、地元の高校生・弥生ちゃんの進路相談に乗ったりと、人々との関わりが広がっていきます。
狸のポコを追いかけていた隣のおばあちゃん、お寺の俊亮(しゅんすけ)や紗枝ちゃん、中島の両親。ポコも保育園に通うことになって、このまま穏やかに二人の生活は続いていくかに思われました。
新年を迎え、金刀比羅宮を訪れた宗太たち。宗太は中島に”ポコとの別れ”を尋ねられ、言葉に詰まってしまいます。
変わらない日常がずっと続けばいいと願っていた宗太ですが、野生のタヌキと戯れるポコを見てずっとこのままではいられないと悟り、化け狸の知識をもつ僧侶・俊亮を訪ねることに。
宗太が俊亮に「人間と暮らした化け狸」の伝承を聞いている間、庭で戯れていたポコはいつの間にか出てしまった耳と尻尾を紗枝に見られてしまいます。
宗太とポコの暮らしを守るため化け狸について一生懸命調べた紗枝。
宗太と二人きりになった山頂で「自分がポコの秘密を知っていること」「人間に化ける力が尽きると二度と化けることができず、記憶もなくなってしまうこと」を伝えます。
しかしその頃、ひろし達と一緒にいたはずのポコが行方不明に。なんとネットでは、耳と尻尾が生えたポコの写真が投稿されてしまうのです…。
涙腺崩壊!最終12巻のあらすじ
耳と尻尾をうまく隠すことができなくなったポコ。
いなくなったポコを探してくれたダーヤマさんや学さん、ひろし達にポコの正体を見られてしまいました。
驚愕するダーヤマさん達に、宗太はポコが化け狸であることを打ち明けます。
ポコと暮らすためなら山奥に隠れ住むようにしてでも暮らしていくと決意する宗太ですが、皆は驚きながらも全面的にポコと宗太の力になることを伝えます。
ところがネットでポコの姿を見た僧侶・俊亮がやって来て「ポコのためを思うならお山に帰すべきだ」と訴えます。
人間に変化する術を使い続けたポコは、このままでは力を使い尽くして記憶を失い、ただの狸として死んでしまうのです。
俊亮から逃げるように、狸の姿になったポコを連れて街へ飛び出した宗太。
雨の中出会った中島はポコが狸であることを信じ、「ポコがどう思っているかだ」と宗太を諭します。
ポコと暮らすためならどんな手段でも探すつもりの宗太でしたが、「なぜポコは自分の元に来たのか」を知るために屋島を訪れます。
屋島について宗太の腕から飛び出したポコ。それを追いかけるうちに二人は雨上がりの山の斜面から転げ落ちてしまいました。
朦朧とする意識の中で、宗太は高校時代にポコを追って怪我をした記憶を思い出します。
そして宗太の父親や俵製麺所をずっと見てきたポコの記憶が、宗太に流れ込んできます。
ポコとの暮らしの中でずっと気づくことができなかった温かい記憶や人との関わりを知ることができた宗太。
別れに涙する二人は、「だいすき」と「ありがとう」を伝えながら抱きしめ合います。
ポコが消えて、一人山を降りた宗太。
住職は、宗太たちが忘れない限り、ポコはいずれは力を取り戻し、ずっと見守ってくれるだろうと励まします。
心配したたくさんの人たちに囲まれ、ポコのいない日々を過ごしていく宗太。けれどそれはかつての生活とは違うやさしい日々でした。
これまで出会った人々に手紙をだし、父親の残した俵製麺所でうどんを振る舞います。
ポコはもういないけれど、あの愛おしい日々は金色に輝いたままずっと残り続けるのでした。
最終回の感想・考察
最後はお別れすることになってしまった二人。
紗枝にバレてしまったあの時。ポコの変化が上手く行かなくなってきていた時点で、タイムリミットはすぐそこまで来ていたんですね。
1巻から12巻までまとめて読むと、この「うどんの国の金色毛鞠」はポコと宗太が出会ってたった1年間の出来事だったんだと気づきました。
たった1年、されど1年。ポコとの日々を通して、宗太は自身の中にあった家族への想い、地元と人々の温かさに気づくことができます。
最終回直前に、宗太が生まれる前から俵製麺所を見てきたポコの記憶の描写があって、
ポコが宗太の元にやってきたのは高校生の時の「鶴の恩返し」的な側面と、
ずっと見守ってきた男の子と家族を心配した「守り神」的な側面もあったのではと感じました。
あとがき
最初の方はポコの可愛さに癒されるエピソードが多かったので、最後は予想以上の感動と現実的なラストに号泣してしまいました。
ところどころ出てくる宗太の過去が伏線だったり、凛子や中島など周囲の人々の想いも丁寧に描かれていて、癒しと飯テロだけではない最高のヒューマンドラマだと思います。
読めば香川に行きたくなりますし、むしろ香川・瀬戸内海を訪れる前に読みたくなる、そんな作品でした。
11〜12巻の展開は見逃せませんので、未読の方はぜひ読んでみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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