2003年から2011年に『週刊少年サンデー』で連載され、全35巻で完結した漫画「結界師」。
最後の方は一読したほどでは理解できないくらい複雑!
というのも「結界師」では事件の元凶といえるキャラが複数いて、それぞれの思惑が同時進行で動いていたから。
- 日永が裏会破壊をもくろんだ理由とは?
- 月久はなぜ神佑地狩りをはじめたのか?
- そもそも烏森(開祖・時守の罪)とは何だったのか?
今回は結界師の中で「なぜそうなったのか」という原因の部分を考察していきます。
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結界師は打ち切りだったのか?
ストーリーについて考える前に、そもそも「結界師は打ち切り」だったのでしょうか?
そう考えた理由は主に2つです。
①キャラ達の過去や因縁が、最後の方でサラッとしか描かれていないこと
②結局良守は母親を犠牲しており、ハッピーエンド感がないこと
「結界師」のラストを簡単に説明すると、
烏森の地に封じられていたお殿様・宙心丸を、裏会総本部のあった神佑地・覇久魔(かなり力のある土地)に移す。良守が真界で作った世界を母・守美子が内側から閉じて封印は完了した。
時音の役目は神佑地の神の元まで抜け出でて、土地を譲ってくれるよう神を説得すること。
扇七郎が嵐座木の神・繭香を殺し、良守の爺ちゃんと時音の婆ちゃんが新たな異界を作って、まほら様を新しい神としてすげ替える。
宙心丸は良守の作った世界で、覇久魔の地に守美子と時守のと共に完全封印されて、代々続いてきた結界師の宿命にピリオドが打たれる。
氷浦のエピソードや、カケルと壱号のやりとりなどがすべて数コマでおわっていて、最後はすごく駆け足感がありました。
結界師はそれぞれのキャラの過去や葛藤など細部まで作り込まれている印象があったので、描ききれなかったシーンがあるような気がしてしまいますね。
作者さんも巻末で「描き足りないところもありつつも」とおっしゃってるのであながち間違いでもなさそう。
明確な情報はでていませんが「ここらで終わらせましょう」的な流れで最終回に持っていった可能性が高いです。
これだけの長期連載ならよくあることですね。
打ち切りといういよりは、おわりを決めて動いていったという感じでしょうか。
ストーリーは最後まできれいに展開しており、無理やりこじつけた終わり方ではなく、きちんとした完結だと思います。
ただもっと描こうと思えば普通に40巻くらいまでいけたのではないかと。※あくまで推測です
ここからは「結界師」の最後の戦いの軸になっていた背景をみていきます。
元凶① そもそも烏森とは何だったのか?
烏森については、開祖・時守が良守に語ったことでほぼ謎が解けました。
異能者として孤独に生きていた間時守が、霊感の強い姫・月影と出会い、その心の闇を見透かされたことで恋愛関係になります。
月影は時守の子を身篭りますが時守は身分違いから離れ離れにされ、城の外から、生まれてくる我が子に世界のすべてを与えようと呪い(まじない)をかけました。
しかし生まれてきた子・宙心丸は周りのすべての命を奪ってしまう強すぎる力を持ち、城の者達を亡き者にしてしまいます。
時守はなんとか宙心丸の力を抑えようと試みますが、強大な宙心丸の力は気に入った者に力を与え、そうでない者達の命を知らないうちに軽々と奪っていきます。
幾つもの村を滅ぼした末に、ウロ様の神佑地に辿り着いた時守は一部の土地を譲ってもらい、真界で異界に城を作り、中から自分ごと封印を施しました。
しかし、それでも強すぎる宙心丸の力を完全に抑えることはできず、力が影響を及ぼす土地・烏森が出来上がります。
結界師の一族は、時守が裏会から素養のある者を弟子にして急拵えで作られました。
最初は複数の家がありましたがわざと競争させるようにしむけることで、時に争いあい、最終的に墨村と雪村の二つの家だけが残ったのです。
そして本作軸の10年前に、最強の結界師である守美子が烏森の異界に入ったことで、10年越しの完全封印計画がスタート。
守美子が家族を捨ててまで計画に身を投じたのは、結界師を継ぎたくないと言っていた幼い良守やこの土地に縛られる家族のために、唯一自分にできることだと考えたからでした。
元凶② 日永が神佑地狩り及び裏会破壊をもくろんだ理由とは?
後半はずっと『烏森サイド』と『裏会サイド』の2つの事件が同時に勃発していました。たぶん読んでいて混乱した一番の原因はこれです。
特に日永が裏会を破壊しようとした理由は本作の軸からみると混乱してしまうので、時系列順にまとめます。
〜400年前
読心の異能を持つ日永(この時は違う名前)が、天女のいるという龍仙境の地で水月に一目惚れ。2人は夫婦となり、ずっと一緒に生きようと誓う。
ところが怪しい異能集会を開いていた月久(夢路)により、強い精神支配系の力を使われ、日永は記憶を改竄され、妻を奪われる。
およそ400年前
日永・月久は兄弟として、間時守の協力を経て裏会を設立。
月久は日永を傀儡の総帥として仕立て上げ、No.2として裏会を掌握していた。
水月は目と頭を改造され、裏会すべての記録を保持するデータバンクとして、月久の部下となり働かされる。
日永と月久は人の体に乗り換えることで400年近い年月を生き続けるが、その記憶は長年の肉体変化で徐々に変質していた。(水月はもともと800年近くを生きる龍の妖混じり)
およそ原作軸
自分の異能に苦しむ日永は生きることに無気力になっていたが、偶然再会した水月の記憶から月久の本性を知って絶望する。
月久がしてきた記憶を知った日永は、月久が築いてきた裏会をすべて破壊して復讐することを決意。
零号、参号、水月のみを連れて異界の城を抜け出し、強力な力を手に入れるために神祐地狩りをはじめる。(異能の力は月久>日永)
日永の神佑地狩りや裏会破壊活動に対抗した月久は、カケル・ミチルらに神佑地狩りを行わせる。
月久は十二人会の幹部三人を殺害し、裏会を混乱させることで自らの手で裏会をもう一度建て直し、掌握しようと企んでいた。
最後は、月久を道連れに日永が正守の絶界に入って自ら消滅。水月は遥の命を救うため、自ら“眺める者”に身を捧げて消滅する。
途中までは日永・月久の兄弟喧嘩が発端かと思われましたが、最後の最後に二人が本当の兄弟ではないこと。日永は水月のために復讐しようとしていたこと。月久がゲス中のゲスだったことが明らかになりました。
日永は本当はすごく気弱で優しい人だったんだろうなと思います。長生きして精神を病んでいく真っ当な人間でした。
400年に渡って最愛の妻を取られ、苦しめられ、利用され続けた事実は、これだけの事件を起こす動機として十分ではないでしょうか。
烏森を巻き込んで裏会側で起こったすべての元凶なんですが、2人が兄弟ではないことが発覚したのが最後の方だったので、もう一度読み返すとわかりやすいです。
元凶③ なぜ扇七郎は繭香を殺したのか
最後の最後までキーパーソンになったのは、兄・正守よりも扇七郎でした。(途中からでてきたキャラなのに)
扇家の成り立ちが『荒ぶる神・繭香へ捧げられた人柱から生まれた異能者』ということは作中で語られましたが、
時守が匂わせていた『扇家が暗殺家業をすることになった理由』などは結局謎のままです。
途中までは「扇七郎は繭香と恋愛関係なのかな」というくらい良好な関係に見えたのですが、結局はわがままな神に振り回されていただけ。
扇七郎が『強すぎる力を与えられることは禍い』であるかのように良守に言っているシーンや、感情を持たない(人間の情感を理解できない?)守美子を『僕の理想とする完全に近い存在』としているような描写がヒントになっていきました。
最後の最後は、時守の代わりにきた守美子と出会ったことで神殺しを決意したような流れです。
扇一族は繭香によって力を与えられ、繭香の機嫌をとって土地に縛られる奴隷のような存在だった。
扇家という家、繭香という力、そういった外的要因で形成されたエリートは、何にも揺らがない心を持つことを願っていたのかもしれません。
そう考えると扇七郎の数々の言葉の裏が見えてくるような気がします。
あとがき
結界師が10年前の作品だという驚愕の事実…!
最後の方は本当に複雑で思い出せない展開が多かったので、今回あらためて読んで混乱した箇所をまとめてみました。
いま読んでも相変わらずワクワクする名作ですね。
田辺イエロウ先生の現作品「BIRDMEN」もめちゃくちゃ面白いので、まだ読んでいない人はぜひチェックしてみてください。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。
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