『黒執事』は2006年から連載されている19世紀末のイギリス(パラレルワールド)を舞台にしたダークファンタジーです。
20巻くらいまで年2〜3冊のペースで出版されていたのですが、現在は多くても年2冊。
年1冊しかでていない時もあり「途中まで読んでいたけど内容忘れてしまった…」という方も多いのではないでしょうか。
今回は途中まで読んでいた人のために、巻ごとのエピソードとあらすじをざっくりとご紹介します。
物語が複雑になってきたので「青の教団って何巻からだっけ?」「最新刊を読む前におさらいしたい」なんて時にご覧ください。
※引用文章および画像は、原作者枢やな先生およびスクウェア・エニックスならびに各権利者に帰属します。この記事は作権を侵害することを目的としたものではありませんので予めご了承ください。
目次
1巻 序章
名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家の当主であるシエル・ファントムハイヴは、若干12歳の少年だった。
わがままな当主と面倒ばかり起こす使用人たちに振り回されながらも、執事セバスチャンは完璧にお客様をおもてなしする。
あくまで、執事ですから――。
人間業とは思えないおもてなしの数々でクラウスをもてなし、エリザベスを宥め、鼠を駆除するセバスチャン。
彼の正体は悪魔。3年前に両親を殺されたシエルが復讐を果たすその時まで、完璧な執事としてシエルに仕えるのだ。
小ネタ
2巻5話から長期連載として本格始動しており、その後アニメ・舞台・実写映画となって海外にも展開する人気作になりました。
2〜3巻 切り裂きジャック事件編
ファントムハイヴ家は英国裏社会の秩序を守る悪の貴族であり、「女王の番犬」としての汚れ役の顔をもつ。
ロンドンで起こっている連続娼婦殺人事件の調査に乗り出したシエルとセバスチャン。
犯人は「切り裂きジャック」と呼ばれ、シエルは葬儀屋(アンダーテイカー)から遺体から子宮が取られていることを聞かされる。
・シエルがドルイット子爵の社交パーティーに女装して乗り込む( 2巻7話)
容疑者としてドルイット子爵に目をつけたシエルたちだったが、犯人はシエルの伯母であり協力者でもあったマダム・レッドが、死神の手によって起こした事件だった。
伯母の凶行に打ち拉がれるかと思われたシエルだが、セバスチャンの思惑に反してシエルは一人で立ち上がり、肉親を犠牲にしてもなおセバスチャンに忠誠を誓うよう求めるのだった。
・死神ウィリアム登場(3巻・12話)
4〜5巻 印度執事(逆さ吊り事件)編
インドから帰国した貴族や軍人が逆さ釣りにされる事件が発生する。
貧民街を訪れたシエルとセバスチャンはそこで凄腕のインド人執事アグニを連れた王子ソーマと出会い、ソーマの想い人であるミーナを探すことに。
悪徳商人ハロルドの言いなりになっていたアグニは、セバスチャンと王室御用達(ロイヤルワラント)をかけてカレー勝負をする。
神の右手を持つアグニに対して、セバスチャンが繰り出したのは当時珍しいカリーパン。
両者同着と思われたその時女王陛下が現れ、子供たちを笑顔にするカリーパンを認めてファントム社が優勝する。
6〜8巻 サーカス団編
子ども達が次々と失踪する事件が発生。
シエルとセバスチャンは事件の関与が疑われる「ノアの方舟」というサーカス団に潜入。そこには死神のウィリアムも潜入していた。
義足や封蝋に記された家紋から、ジョーカーたちのパトロンがケルヴィン伯爵であることを突き止めたセバスチャン。
サーカスは孤児で身体障害をもつ子ども達で構成されており、ジョーカー達は恩人であるケルヴィン男爵の歪んだ欲望を叶えるために子ども達をさらっていたのだ。
屋敷に乗り込んできたシエルとセバスチャンに、ケルヴィンは3年前の儀式の場を再現してみせる。シエルは縋るジョーカーを振り払ってケルヴィンを殺害。
ファントムハイヴ家に侵入したサーカス団員達は、その隠された力を発揮したバルト・フィニアン・メイリンの3人に一掃されてしまった。
・ファントムハイヴ家使用人たちの正体が明らかになる(8巻33話)
悲惨な真実はシエルに強烈なトラウマを思い起こさせる。シエルはセバスチャンに命令し、屋敷ごとすべては業火に包まれた。
・ロナルド・ノックス初登場(8巻・35話)
『黒ミサ』とは
両親を惨殺されて人身売買されたシエルが生贄にされそうになった悪魔崇拝者の儀式のこと。のちのネタバレになるので省略しますが、シエルはとある方法で悪魔召喚を行い、セバスチャンと契約するに至ります。
9〜11巻 ファントムハイヴ邸連続殺人事件編
・女王の執事Wチャールズ登場(9巻・38話)
名門貴族ファントムハイヴ家のパーティに招かれた売れない小説家アーサー。
女王の遠縁・ジーメンスを主賓に社長や著名人が招かれた晩餐会をおえた深夜、主賓のジーメンス、執事のセバスチャン、そして海運企業の御曹司のフェルペスが次々と殺害される。
そこへ嵐の中をセバスチャンに伝書梟で呼びだされたジェレミー・ラスボーン牧師がやってくる。
名探偵よろしく次々と謎を解いていくジェレミーは、フェルペスがシエルを狙った蛇に誤って殺されてしまったこと、ジーメンスは仮死状態だったことなどを見破り、貿易会社社長のウッドリーが犯人として連行される。
ところがジェレミーに違和感を感じたアーサーは屋敷に戻り、真実を知る。
ジェレミーはセバスチャンの変装した姿で、すべてはシエルに害をなす犯人を炙り出すための自作自演だった。
ジーメンス、セバスチャン殺しの犯人はグレイ伯爵(Wチャールズの一人)であり、サーカス騒動をすべて揉み消してしまったシエルを殺人犯にしようと画策していたのだ。
真犯人を悪党ウッドリーに押し付けることで切り抜けたシエルは、潜伏していたスネークを騙して仲間に引き入れる。
・元サーカス団員スネークが屋敷のフットマンになる(11巻・51話)
小ネタ
11〜14巻 豪華客船編
死者を蘇らせる病院の噂を聞いたシエル達。
非合法な人体実験をするその真実を探るべく秘密結社・暁(アウローラ)学会が『人体蘇生』のデモンストレーションをするという豪華客船カンパニア号に乗り込む。
豪華客船上で行われた『人体蘇生』の儀。
しかしゾンビ達は生きた人間を襲いはじめ、船上は大混乱に陥る。
シエルの婚約者エリザベスは、絶体絶命の窮地で天才的な剣技を使ってゾンビを撃退。ところが船は氷山に衝突し沈没していく。
沈みゆく船からエリザベス達を逃して船内に戻ったシエル達は、人体蘇生の手助けをしていたのが葬儀屋(アンダーテイカー)で、彼が元死神であることを知る。
葬儀屋はニセの走馬灯記録を繋いだゾンビを動物兵器として実験していたのだ。葬儀屋の死神の鎌に貫かれたセバスチャンは、遠くなる意識の底で“シエルとの出逢い”を回想する。
・シエルとセバスチャンの過去(13巻62・64話)
沈みゆく船の中で死神達と死闘を繰り広げたセバスチャン。葬儀屋はペンダントを残して逃げてしまった。
水没してもなお襲ってくるゾンビを朝日がでるまで倒し続け、セバスチャンは珍しく重傷を負い、カンパニア号沈没事故は幕を閉じる。
葬儀屋の正体
14〜18巻 寄宿学校編
行方不明になった女王の甥・デリックアーデンの行方を探すべく、名門寄宿学校ウェストン校に潜入したシエルとセバスチャン。そこは伝統と規律に縛られた独自の閉鎖空間だった。
赤寮モーリスの不正を暴き、監督生に近づいたシエル。アーデンを含む5人の生徒が校長の命で紫寮に移動となり、その後行方不明になっていることが明らかに。
校長に接触を図るためにクリケット優勝を狙うシエルは、緻密な計算と策略で青寮を優勝にみちびく。
そうして参加した真夜中のお茶会で、ようやく会えた校長の正体は葬儀屋だった。
かつてデリックは副校長と癒着し、学園内で卑劣ないじめを行なっていたのだ。
P4はデリックを殺害してしまい、その処理を暁学会に依頼。すべては学園の名に傷をつけまいとする歪んだ正義感からだった。
進化したゾンビ(死者蘇生)に足止めされて葬儀屋は逃亡。P4は放校処分となった。
18〜22巻 緑の魔女編
足を踏み入れただけで呪い殺されるという“人狼の森”を調べるためドイツにやってきたシエル達。
狼の谷を治めるのは、若き領主で緑の魔女と呼ばれる少女・サリヴァンだった。
サリヴァンの忠告を無視して夜中に森の探索を行った二人だったが、人狼の森で呪いを受けたシエルが精神錯乱して大人達に心を閉ざしてしまう。
シエルの治療と引き換えにサリヴァンの執事として働くセバスチャン。
呪いの正体を掴んだセバスチャンは痺れを切らして「契約違反」のシエルを捕食しようとし、シエルは本来の自分を取り戻す。
シエルとセバスチャンに地下に連れていかれたサリヴァンは、人狼の正体が人間であり、自身が作っていた究極魔法が史上最悪の毒ガスであることを知る。
すべては天才的頭脳を持つサリヴァンを科学者として育成するため、人狼の森と村すべてが造られたものだったのだ。
緑の魔女と人狼の秘密を暴いたセバスチャンとシエルはドイツ軍特殊部隊に襲われる。
父親の級友・ディーデリヒに助けられたシエル。戦車を撃破。軍事鉄道を使って狼の谷を脱出。
軍がサリヴァンを始末するつもりだと知ったヴォルフは味方を裏切ってサリヴァンを助ける。二人は英国へと渡った。
・ドイツの死神2人登場
23〜26巻 青の教団編
ロンドンで流行りのスフィア・ミュージックホール。
カルト教団の疑惑がかかるホールと帰ってこなくなったエリザベスを取り戻すため、シエル達は調査に乗り出す。
そこには占い師・ブラバットと、S4としてアイドル的存在となっていた元監督生達がいた。
シリウスだけが参加できる限定集会に潜入したシエルは、スフィア・ミュージカルホールが密かに参加者から血液を集めていることを突き止める。
・死神協会科学捜査課・オセロ登場(23巻114話)
仕立て屋に紛れて潜入したセバスチャンをエリザベスが攻撃する。エリザベスがなぜか「自分だけは…」と帰還を拒んだ。
人々の熱狂を逆手にとったシエルは、ファントム・ミュージックホールを設立。
新たなカリスマF5を作って、スフィア・ミュージックホールの血液供給源を減らし、その悪事を白日の元に晒す。
ところが首謀者のブラバットが逃亡。温泉地・バースでバイオレットを保護したシエルは、彼こそがシエル達に助けを求めて寮弟達に招待状をだした本人だった。
その頃、タウンハウスに住みついていたソーマ達が何者かに襲われる。アグニは命がけでソーマを守って死亡してしまった。
壁には「Who stole the Candy from my tummy?(お腹のキャンディ盗ったのだぁれ?)」という文字が刻まれ、シエルは動揺する。
マナーハウスに戻るとそこには葬儀屋によって蘇生した『本物のシエル』が待ち構えていた。
26巻〜27巻 シエルの過去編
※ここからはこれまでのシエルを『弟orシエル(弟)』、本物のシエルを『シエルorシエル(本物)』と表記してます
シエルとその弟は双子だった。
長男として伯爵家を継ぐことが決まっているシエルに対して、シエル(弟)は喘息持ちで病弱。
10歳の誕生日、ファントムハイヴ家は何者かに襲撃され、シエルと弟は悪魔崇拝の信者達に売られてしまう。
ひと月の凌辱ののち、シエル(本物)は黒ミサの生贄として胸を刺され、弟の目の前で殺される。(黒ミサの内容が明らかに)
激昂した弟はシエルの魂を犠牲に悪魔を召喚してしまった。
シエル(本物)の魂と引き換えに兄が願った姿になることを決意した弟は、悪魔と取引をしてシエル・ファントムハイヴ伯爵として復讐を果たすための3つの契約をする。
伯爵の証である指輪をシエル(本物)の腹から取り出して、シエル(弟)はファントムハイヴ伯爵へと成り代わった。
28巻〜 逆襲のファントムハイヴ編
※これまでのシエルを『弟orシエル(弟)』、本物のシエルを『シエルorシエル(本物)』と表記してます
セバスチャンによって焼き払われた黒ミサの舞台。ところがシエル(本物)は葬儀屋によって遺体を回収され、ずっとシエル(弟)の側にいたのだ。
二人が再会したファントムハイヴ邸に警察が突入する。
エリザベスの証言によりシエル(弟)はファントムハイヴ伯爵になりすましていたことが暴かれ、シエルを碧き星・シリウスと崇拝するブラバットによってシエル(弟)はスフィア・ミュージックホールで血液を集めていた主犯にされてしまう。
集められた血液はシエルの蘇生のためのものだった。
警察に捕まったシエル(弟)とセバスチャンを助けだしたバルトたち。
逃走するシエル(弟)は劉に匿われ、桃源郷へと身を寄せる。国外逃亡を思慮していたセバスチャンだったが、シエル(弟)は「伯爵の座を取り戻す」と再起を決意。
シエルの蘇生にいまだ大量の血液が必要なことから、その供給源を絶つべく反撃に乗りだした。
葬儀屋が関わっていた暁学会に関連する不審な事態が、国内4箇所にあることを突き止める。
シエル達は4組に分かれてそれぞれを調査することになり、メイリンと藍猫はナースヨークシャーの男爵家へと潜入するー。(〜30巻)
シエル(弟)の名前は?
26巻でおよそ10年に渡って隠されてきた伏線、シエル双子説がようやくあきらかになりました。
本当は双子の兄の名前が『シエル』。では主人公である弟の本名は何なのでしょうか。
実はシエル(弟)の名前は、未だ明かされていません。
それどころかかなり巧妙に隠されているので、これも今後の謎の一つになります。
これまでに出ているヒントは二つ。
26巻132話の過去編で、領内視察の際に父・ヴィンセントが牧師と話している会話で「英国では珍しい名前」「伝統的ではない」ということ。
また、27巻139話で言いかけたセバスチャンに対して「本当の名前を呼ぶな」と牽制していて、この場面はかなり強引な印象を受けました。(何かヒントありそう…)
ようやく双子説が肯定されたことで、読み返すと色々な発見が。エリザベスの名前の呼び方、幼少期の回想シーンなどは特に読み応えありますね。お墓の数やセバスチャンの微笑みも意味深でした。
原作とアニメの違いについて
アニメ第1期に含まれる原作は「切り裂きジャック」と「インド執事(カレー編)」のみで、アニメオリジナルエピソードが多い全24話。
アニメ第2期はさらに完全オリジナルで全12話です。
原作にはでてこないキャラクターで構成されており、名門トランシー家の当主・アロイスとその執事クロードvsシエル・セバスチャンのアニメ独自のストーリー。
これはこれで別物と考えて、原作ファンから概ね高評価だったようです。
アニメ第3期は原作のサーカス編で全10話。
1期・2期のラストが特殊だったため、ストーリーは繋がっていません。これだけ見ても十分に楽しめるでしょう。
「ファントムハイヴ邸連続殺人事件」を原作としたOVAが『黒執事 Book of Murder』のタイトルで全2話で制作されています。
最後に映画です。アニメ終了の2〜3年後に豪華客船編を原作とした『黒執事 Book of the Atlantic』が制作されました。
というわけで、現在アニメ映像化されているのは豪華客船編まで。
続きが気になる方は15巻「寄宿学校編」から読み返してみてはいかがでしょうか。
おわりに
『黒執事』は随所にシエルの過去や葬儀屋の意味深な伏線が散りばめられているので、いつも1巻から読み返さないといけない気になってしまいますよね。
けれど一つのエピソードだけ見れば大体3〜4巻でキレイにまとまっているので、実は読み返しやすい作品でもあります。
26巻からは次々と謎が明らかになり、今後の展開が楽しみですね。ぜひこの機会に読み返ししてみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!