芸術と文化がはなひらいた、華やかな印象のある中世ヨーロッパ。
それと同時に、魔女狩りや宗教改革などの壮絶な歴史に覆われた激動の歴史でもあります。
今回は対照的な芸術と歴史の側面から、中世ヨーロッパを舞台にしたおすすめ漫画をご紹介します。
一般的に、世界史でいわれる中世ヨーロッパとは、5世紀から15世紀のローマ帝国滅亡から宗教改革が起こるまでの、ローマ教皇の思想が支配していた「暗黒の時代」を表します。
ここでは14～16世紀までのルネサンス（芸術活動）を中心に、一部近代に至る作品もご紹介しています。
目次
楽しく読める！華やかな芸術・文化編
アルテ
16世紀初頭・フィレンツェ。女がひとりで生きていくことに理解がなかった時代に、貴族生まれのアルテは、男だらけの職場・画家工房への弟子入りを志願するー
どんな困難の中でも自分の信念を曲げないアルテの姿は、ルネサンス時代を生きる1人の登場人物としてとても魅力的。
当時の時代考証もさることながら、明るく前向きなアルテの生き様に心動かされる作品です。絵画の知識や歴史も面白く、大人にこそ読んでほしいアート系歴史物語。
ひとはけの虹
絵画に虹の輝きを生み出す不思議な鉱石・オリハルコン。
さまざまな時代に出没し、画家たちに手を差し伸べる謎の人物・ラファエロ。果たしてその目的とはー？
フランス、イタリア、オランダ…様々な時代のヨーロッパを舞台に、画家と女性たちを描いたオムニバス作品。
実際に存在した人々をモチーフに、時代を超えて少しずつ繋がっていく物語が読み応えあります。西洋絵画に興味がある人にぜひ読んでいただきたい良作。全3巻。
さよならソルシエ
その名を知らない人はいない天才画家ゴッホと、その弟画商テオドルスの知られざる軌跡を描いた物語。
2014年の「このマンガがすごい！」第1位を受賞した、テオとゴッホという芸術家、2人の兄弟の人生をドラマチックに描いた作品です。
穂積さんの漫画は、豊かな感情の表現がとても魅力的で、どんどん引き込まれていきますよ。全2巻。
バビロンまで何マイル？
雑木林で遊んでいた幼馴染の仁希（にき）と友理（ゆうり）は、とんがり帽子の変なおじいさんを助ける。
時を経て高校生になった二人は、おじいさんからお礼の指輪をもらうが、それはどの国の言語でも理解できる上、いつの間にかタイムスリップしてしまうという魔法の指輪だったー
現実主義の仁希と、多国籍な血筋をもつイケメンの友理。幼なじみの二人が織りなす、ワクワクドキドキのファンタジーアドベンチャー。
15世紀を生きた、チェーザレ兄妹の生き様を描いた歴史ものとしても面白い作品です。全1巻。
異国迷路のクロワーゼ
19世紀のパリを舞台に、長崎から単身フランスに渡ってきた少女・湯音（ゆね）が、鉄工芸品店「ロアの看板店」で働きながら、人々と交流していく様を描いたハートフルストーリー。
異国の文化や慣習に戸惑いながらも、少しずつ理解を深めていく様にほっこりとします。日本文化が流行していた地という背景も面白く、一読の価値ありの名作。
原作はライトノベルですが、コミカライズ版はこの合作版しか残っていないのでかなり貴重かもしれません。
ジゼル・アラン
20世紀初頭のヨーロッパ。、名家を飛びだしてアパートの大家を営むジゼルは、ある日"何でも屋"を開業するー
様々な人との出会いやつながりを通して、ジゼルも成長していくヒューマンドラマ。
可愛らしいイラストで、ヨーロッパの街並みや文化が好きな人におすすめの時代ファンタジーです。
鳥肌の立つ！本格派のグロ＆過激な歴史編
ヴィンランド・サガ
11世紀の北欧、圧倒的力を持って残虐の限りを尽くしたヴァイキングの叙述作品。
幼くして戦場を駆け抜ける少年・トルフィンは、父親を殺した敵をとるために生きていた。はたしてトルフィンの復讐の行方は？そして、本当の戦士とは何なのか？
北欧の史実に基づいて、イングランドやノルウェーの戦争やヴァイキングの生き様が描かれています。力強い描写とあわせて残酷な表現も多し。
主人公が実在の人物をモデルにしていると知って衝撃を受けました。『ヴィンランド・サガ』はマンガBANG!で一部無料で読めます↓
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インノサン少年十字軍
13世紀のフランス。普通の羊飼いとして生活していた少年・エティエンヌは、森の中で美しいラッパと一通の手紙を見つける。
神の声に従い、エルサレムに向かうことを決意したエティエンヌは、12人の仲間と共に「少年十字軍」を結成するー
13世紀に実際に起こった少年十字軍の悲劇を描いた歴史ドラマ。
希望いっぱいに旅立った少年たちが、人間の欲に翻弄され、波乱に満ちた運命を歩んでいく様にハラハラします。全3巻。
狼の口 ヴォルフスムント
14世紀初頭、ドイツとイタリアを結ぶ交通の要所・ザンクト＝ゴットハルト峠には、堅牢な砦からなる『狼の口（ヴォルフスムント）』と呼ばれる関所がある。
ハプスブルク家から派遣された代官ヴォルフラムは、その洞察力で、関所を抜けようとする密行者を見つけては残虐に処刑し、民衆に恐れられていたー
残虐な行為、民衆からの畏怖、裏切り。当時の史実に基づいた中世ヨーロッパの世界を描いたドラマティックヒストリー。
冷酷非道な代官の仕打ちと、隠された伏線に鳥肌が...。国が国として独立するとはこういうことが、と思わされます。全8巻。
乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ
1420年、ボヘミア王国。戦争により家族を虐殺された12歳の少女シャールカは、フス派義勇軍の英雄ヤン・ジシュカに導かれ、仲間たちと共に反カトリックの戦いに身を投じていく。
15世紀に中央ヨーロッパ（現在のチェコ・ポーランド近辺）で起こった『フス戦争』をモチーフとした珍しい歴史マンガ。
12歳の少女・シャールカが戦士として、凄惨な戦争に赴きます。
その可愛らしい表紙に騙されて読むと、かなり本格的なグロ&歴史漫画ですのでご注意ください。全12巻完結。
レベレーション（啓示）
15世紀のフランス。神の啓示を受けたとしてフランス軍に従軍し、イングランドとの百年戦争でフランスを勝利に導いたジャンヌ・ダルクの生涯を描いた歴史作品です。
農夫の娘であった彼女が、なぜ「オルレアンの乙女」と呼ばれるまでになったのか。
普段知ることのないジャンヌ・ダルクの謎を読み解くことができる作品です。全4巻。
７人のシェイクスピア
16世紀のロンドン、数々の名作を後世に残した劇作家・シェイクスピアの半生を、当時の世相や歴史的陰謀と絡めて描いたアートヒストリー。
閉塞感のある鬱屈とした時代背景と、その中で不遇な待遇を強いられてきた人々。
力ある描写で、歴史ものとして読み応え抜群です。
シェイクスピアの作品をよく知らない人でも面白く読めるはず。全6巻。
第３のギデオン
舞台はフランス革命前夜。三部会の議員となり、貧困にあえぐ国を合法的に救いたい平民のギデオン。目的のためなら残酷でも最短の道を進もうとする、貴族のジョルジュ。
国を変えたい二人の男が、共にその足を踏み出した。正義と悪と愛と憎悪の共同作業がむかうのは、血の地獄か、理想の未来か。
18世紀のフランスを舞台に、正反対の性質をもつ平民と貴族が、変革を起こす歴史ミステリー。
目的のためには手段を選ばなジョルジュの残酷さが、当時の世界観とあって悲しいほどに胸に刺さります。全8巻。
イノサン
フランス革命の時代に、「処刑人」として生きた一族・サンソン家の数奇な運命を描いた歴史サスペンス。
18世紀のフランスに実在した処刑人、シャルル=アンリ・サンソンの半生が芸術的かつ凄惨に描かれています。
耽美な世界観の中に、無慈悲な拷問や処刑シーンが描かれており、色々な意味で衝撃的。
第17回文化庁メディア芸術祭で、審査委員会推薦作品に選ばれています。全9巻。
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薔薇王の葬列
中世イングランドで勃発した内乱・薔薇戦争。ヨーク家とランカスター家が王位簒奪を繰り返す中、ヨーク家の三男・リチャードは、男女両方の性を持つという秘密を抱えていたー
シェイクスピアの史劇「リチャード三世」「ヘンリー六世」を原案としたエピックファンタジー。
次々と入れ替わる王の冠に、だれが味方か敵かわからない複雑な人間模様。壮大な歴史と歪な愛の物語が美しいイラストで描かれています。重くて暗い展開が好きな方に全力でおすすめ。全17巻+外伝。
あとがき
今回は西洋の世界観が満喫できる作品を、芸術と歴史の２ジャンルに分けてご紹介しました。
本格的な中世ヨーロッパを描いた漫画は、歴史ものとしても勉強になるので、ぜひ読んでみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました！
