あらいぐま書店

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『ひきだしにテラリウム』オリーブの葉の意味は?各話のギミックを解説してみた

『ひきだしにテラリウム』とは…?

ダンジョン飯』の九井諒子による珠玉のショートショート・掌編漫画。

※掌編(しょうへん):短編よりもさらに短い作品のこと。「短い短編小説」であるショートショートよりもさらに短い。

Webメディア・マトグロッソで2011〜12年にかけて連載された作品に、書き下ろしを加えた全33篇からなり、数々の賞を受賞しています。

  • 2013年、第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞
  • 2014年、宝島社『このマンガがすごい!2014』オトコ編 第7位受賞
  • 筆者が選ぶ『1巻で面白い!おすすめ漫画ランキング 』堂々の2位!!!!(←おい)

SFを土台にファンタジーや日常ものなど、形にとらわれない発想で、驚きと感動が詰まった傑作なんです。

わずか数ページの中に笑い・涙・驚きの連続で、まさにワンダーランド!

ただあまりにも作者の教養が深すぎて、一読しただけでは「ん?」と理解が及ばなかったストーリーがありました(←)

今回は『ひきだしにテラリウム』の感想と、物語の中にある謎やギミックで複雑だと思った部分を調査&考察していきます。

※ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください、各考察は筆者の主観になります

「かわいそうな動物園」"オリーブの葉"の意味は?

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(出典:ひきだしにテラリウム)

最初は動物園のお話かなぁと軽い気持ちで読んでいました。

しかし、「生まれる像の子供がアルビノだから殺さなければいけない」と不穏な会話がでてきます。

この動物園は経営難なのか?と思いながら読んでいくと、最後に最初にでてきた「いなくなった鳥」がオリーブの葉を加えて戻ってくるのです。

このオリーブの葉の意味ですが、「ノアの箱舟」を表しています。

「ノアの箱舟」は、

神様が堕落した人々に呆れて、地上を洪水で滅ぼし、正しいとされた人間・ノアだけが、様々な動物たちと箱舟に乗って彷徨います。

地上に生きていたものを滅ぼしつくした洪水は40日間続き、その後150日経っても水はひきません。

ノアは何度か鳩を放ち、そのうちの一匹がオリーブの葉を加えて戻ってきます。ノアは水が引いたことを知り、家族や動物たちと新たな地上に降り立つというお話です。

つまりこのお話は動物園ではなく、種の存続のために動物や人間を乗せていた方舟だったわけですね。

多種多様な生物を残すために、アルビノの象を養う余裕はありませんし、生まれてくる卵も潰してしまわなければいけません。

最後のコマの背景に海に沈む何かが描かれているので、どこかの滅びた星の話なのかもしれません。

最初から読み返すと、1コマ1コマの意味がわかって鳥肌がたちました。

「パラドックス殺人事件」田中だよ、の威力

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(出典:ひきだしにテラリウム)

役にのめり込みすぎて、脚本家=神 を殺してしまった 俳優=田中。

果たしてこの殺人事件の原因はどこにあるのか?!というお話。

TVの中で物議をかもす専門家たちに対して、少年がいう「田中だよ」の威力がすごい。

もう一人の少年が「あ、こいつ言っちゃったよ」みたいな顔をしているのも面白いです。

確かに脚本家を殺したのは田中で間違いないです。理屈をコネる大人たちを痛烈に皮肉っているような作品でした。

「えぐちみ代このスットコ訪問記」トーワ国ってどこ?

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(出典:ひきだしにテラリウム)

取材旅行に行った漫画家と、その漫画家が宿泊した宿で働く少年の2つの視点から描かれたこちらの話。

あまりにもリアルだったので、実際にある国の旅行ルポか?と思ったのです。

調べてみると、「トーワ国」は九井諒子先生が個人サイトで描いていた長編漫画『西には竜がいた』の舞台らしい。

つまりお話にでてくる架空の国を、さらに架空の漫画家が旅したレポートということですね。

九井諒子先生が、WEBで作品発表&同人活動していたことを知らなかったことが悔やまれます。

当時からのファンには堪らない作品ではないでしょうか。

「旅行へ行きたい」トチギー島(Tochigie)って実在するのかな?

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(出典:ひきだしにテラリウム)

生まれてこの方一度も栃木をでたことのない青年が、地図にダーツを投げて当たった場所に旅行に行こうとするが、何度投げても栃木に当たる。

果ては日本を切り取った世界地図にダーツを投げたら、トチギー島(Tochigie)に辿り着くというお話。

いや、トチギー島って本当にあるのかなって(←)

オーストラリア周辺の小さな島とか、カリブ海の端っこにありそうだなっと思って本気で探しました。

その結果…

結論、たぶんない。

「ユイカ!ユイユイカ!」ってまさか…。

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(出典:ひきだしにテラリウム)

とある小国を舞台に、時折飛来するイエーカーという魔物を全力で駆除する兵士たちと、反発する住民たちとの話。

ファンタジーかと思ったら、蚊取り線香だったというオチです。

ただこの呪文みたいなタイトル…もしかして"カユい"からきている…?

カユイカユイユイカユイカ……まさかね。

「すごいお金持ち」社会人が読むべき話第一位!

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(出典:ひきだしにテラリウム)

海に囲まれたすごいお金持ちの豪華だけれど孤独な日常について、ホテルの客とスタッフが語るエピソード。

一体彼女はどんな仕事を?

「金を持っていてもしょうがないことがある」そういって人々に諦めと安心感を与える仕事です。

すごい破壊力の言葉です。

「春陽」/「秋月」テーマで繋がっていた2つ

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(出典:ひきだしにテラリウム)

「春陽」は動物を人間に置き換えた日常シュールもの、「秋月」はSFサスペンス、と思っていたのですが、この2つの話は「飼うもの」と「飼われるもの」で対になっているんですね。

最初は動物を人間に置き換えて、人間の傲慢さを描いた作品かと思いました。

しかし、その後の「秋月」を読めば、飼われるものにもそれなりの幸せがあるという両方の視点が見えてきます。

「可哀想だ」と思う感情が、相手にとっては必ずでもそうではないということに気付かされたお話でした。

「すごい飯」は何を例えていたのか

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(出典:ひきだしにテラリウム)

はじめて食べたフランス料理を、すごい発想で語る男の話。

いい匂いのするダンゴムシっぽい黒い粒→ブラウンマスタード

メラニンスポンジ→ムース

犬のエサ→テリーヌ

すんげー小さい赤い魚→タイの切り身

ゴムに包まれた中がドロッとしたものって気になります…あの割るとプツッとなるやつかな。

ちなみにブラウンマスタードはこんなやつです。ダンゴムシ...⬇︎

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「ひきだし」この本のタイトルストーリー

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(出典:ひきだしにテラリウム)

テラリウム (Terrarium) とは?

陸上の生物(主に植物や小動物)をガラス容器などで飼育・栽培する技術。園芸の1つのスタイルとして、多くの研究者やアマチュア愛好家によって製作されている。

この本のタイトルになっている作品。

ホラー?SF?とドキドキさせておいて、あっさりギャグにもっていきます。

ショートショートの世界観は、ある意味漫画の中のテラリウムなのかもしれません。

あの壁一面の棚をあけると、それぞれのショートショートの人たちがでてきたりして。

「こんな山奥に」人間は2人だけ?

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(出典:ひきだしにテラリウム)

最後のセリフで気づいたのですが、登場人物が主人公の2人以外すべて狐かもしれないというお話。

2人が入ってきたときに、ジロリと睨んできた店員、油揚げを食べたお父さんを怒る女の子。登場人物もなんとなく全員ツリ目気味な気がします。

プロポーズした男の子に至っては、「手袋を買いに行くからって君の手のサイズを測らせてもらったのは…」というセリフから、あの有名な絵本「手◯を買いに」を彷彿とさせます。

実は人間が2人しかいなかったという、狐につままれたかのようなお話でした。

「未来人」あーやられた!

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(出典:ひきだしにテラリウム)

冒頭の「すれ違わない」とここで繋がってくるところに、「あーやられた!」と思わず声にだしてしまいました。

漫画の取材のために平成の学生たちを調べる未来人。

鼻にプスっとさす変な機械で、お互いの考えていることがすぐに伝わるのです。

読み返してみたら、この未来人のおじさんは「すれ違わない」にでてくる編集者・山田さんですね。

漫画に行き詰まる作家先生のために、わざわざタイムマシンでやってきたというオチでした。

それにしても鼻にさすシーンがシュールすぎる。

平成の世の中も、いずれ歴史の教科書にこんな風に取り上げられるんだろうなぁと思ってしまうショートショートでした。

あとがき

様々な角度から描かれた作品に、作者の引き出しの多さを感じますね。

たった2~8ページの中に驚くような仕掛けが込められていて、読めば読むほど作者の発想に感動してしまいます。

短編集「竜の学校は山の上」や「竜のかわいい七つの子」は、ストーリーの中にじわじわ広がってくる感動があるのですが、「ひきだしにテラリウム」の魅力はその一瞬の閃き。

ショートショートの魅力が最大限までひきあげられた一冊ですので、未読の方はぜひ読んでみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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