王様達のヴァイキングが完結!19巻ネタバレ感想と最後の結末は?【ネタバレ注意】

「王様達のヴァイキング」が、約6年半の連載に幕を降ろしました。

天才ハッカーとエンジェル投資家が出会い、最強タッグで難事件や社会を変えていく本作。

ハッカーやITベンチャー、エンジニア達のリアルな姿が描かれ、本職の人たちからも人気があったほどです。

今回は「王様達のヴァイキング」のこれまでの事件と、最終章の結末を簡単にご紹介します。

※最終回までネタバレしていますので、未読の方はご注意ください

これまでの事件

全19巻で登場した事件がすごいので、サクッとまとめてみました。

  • 消費者金融へのサイバー攻撃 (是枝犯人・1巻)
  • 政府機関HP改ざん事件 (1巻)
  • ゲームビットサーバ不正侵入事件 (1巻)
  • 朝海鉄工へのサイバー攻撃事件 (2〜3巻/武器商人・笑い猫登場)
  • ATMクラッキング事件/警察との捜査 (4巻)
  • 国会議員・山田毅の不正献金捜査・オンラインゲームでの資金洗浄案件 (5巻・ヴァルキュリヤ登場)
  • 遠隔操作事件/闇サイト・ステーション撲滅作戦/是枝拉致事件 (6~7巻)
  • 坂井大輔インサイダー取引疑惑 (8巻)
  • 北里弁護士事務所脅迫事件 (9巻)
  • 航空自衛隊・国産無人戦闘機ハッキング事件 (9〜10巻/特研設立)
  • ショッピングサイトサイバーテロ事件 (10〜11巻)
  • 監視傍受システム「ミラージュ」への侵入作戦 (12〜13巻)
  • 「デウス」開発/サミット大規模テロ事件 (14〜15巻)
  • アイドル・星河きらりストーカー事件 (16巻)
  • ABWコイン仮想通貨暗号化事件 (17巻)

この中には現実でも起こった類似事件が多数あるので、後ほど詳しく解説します。

さてここからは最終章のあらすじです。

ついに最終章!18〜19巻の内容は?

坂井と是枝は蘇芳を欺いて「デウス」を善良なサイバー兵器にし、犯罪を未然に防ぐためのシステム「ピースメーカー」を作ろうとしていた。

しかし、テロ事件からデウスは各国のインフラ整備に使われるまでに存在感を増していく

自国の監視システム”ミラージュ”を有するアメリカは、経済制裁を盾に「デウス計画」の中止を要求してくる。

そんな折に、米軍のシリア特殊作戦基地がテロ組織の報復にあって壊滅。是枝はデウスの使用権がテロ組織に渡っていることに気づいた。

 

蘇芳の企みと戦争を止めるため、調査を開始した是枝たち。

デウスをテロリストに渡したのは、内調に出向していたかつての特研の仲間・真鍋だった。

神崎たちは、デウスによって作られた暗殺対象者リストを送信しようとした真鍋を、なんとか食い止める。

国家の有利になるように情報を私物化しようとする蘇芳に、とどめを刺すと決意する是枝たち。

その頃、国内の複数の病院がサイバー攻撃を受ける。攻撃はアメリカの民間軍事会社からだった。

是枝は敵のサーバーにDDoS攻撃を仕返し、院内のシステムを復旧。「攻撃して守る」是枝らしいやり方で病院を救った。

 

蘇芳を攻めるため、特研の面々は情報を集める。坂井とヴァルキュリヤは蘇芳の右腕だった高星雷の居場所を突き止め、協力を得た。

笑い猫は蘇芳の隠れ蓑が「蘇芳派未来日本研究会」であることを突き止める。

蘇芳のこれまでの悪事の証拠とアジトを突き止めたヴァルキュリヤと笑い猫。

坂井は笑い猫・ヴァルキュリヤと組んで、蘇芳を拉致する計画を立てる。

犯罪者に落ちてでも蘇芳の企みを止めるために。特研の皆を関わらせることなく…。

寿司屋に息子として訪れた笑い猫はそのまま蘇芳を拉致。

警察とのカーチェイスが繰り広げられる中、坂井を助けにきた是枝と神崎が応援に現れる。

蘇芳の研究所を訪れた是枝たちは、そこで蘇芳に悪事の証拠を突きつける。

「正義を成すためには悪の道を選ぶしかない」と開き直る蘇芳を、笑い猫は首を絞めて殺そうとする。

ところが蘇芳は、1時間後に原子力発電所へのサイバー攻撃を仕込んでいることを蘇芳は告白。自分を殺せば、是枝たちは「大量殺人者になる」と告げる。

止めるには数十桁の解除コードを入力するしかないが、蘇芳は決して吐かない。

開発室の扉をこじ開けた是枝たちは、原発内に入り込んでいるウィルスの脆弱性を見つけて、破壊しようとする。

残り時間30分、ウィルスに脆弱性が見つからなければこの作戦は成功しない。

唯一の突破口は、ウィルスと司令塔が通信しているメッセージ処理部分。笑い猫が発見した唯一のバグを、是枝はギリギリまで粘り、最大の一発で攻撃することに成功する。

 

『蘇芳の野望をここですべて叩き潰す』

是枝たちは、蘇芳の最終目的がハードウェア上の欠陥を利用して、世界中のIT企業のデータセンターをクラッシュさせる計画だったことを知る。

破壊したのちにデウスで防げたことを吹聴すれば世界中のデータが自分の元に手に入る寸法だ。

ハードウェアの欠陥が一丁一石では解決しないことに気づいた是枝は、蘇芳よりも先にデータセンターをクラッシュすることで、相手に気づかせて防衛させることに成功する。

たとえ是枝たちが犯罪者となっても「世界は自分たちで戦ってくれる」。蘇芳の野望は完全に潰えた。

坂井に銃を向けた蘇芳だったが、神崎の細工により暴発。駆けつけた特研(二課)の面々により、電子計算機損壊等業務妨害未遂罪、および殺人未遂の現行犯で逮捕された。

 

『魔王を退治する傍ら世界も救ってしまった』

そう笑うヴァルキュリヤと笑い猫。

是枝はデウスをオープンソースにして、世界中の皆に公開したいと坂井に話す。

監視システムを世界中の人間の眼で監視する。システムが正しい形で使われるために。

デウスを世界の一部として解放した是枝と坂井は、世界に新しい景色をもたらした。

 

その後、是枝はどこの組織に所属することもなく一人暮らしをはじめる。

坂井は海辺の町で隠居してしまった。

ゴリラ君の結婚式に参列した是枝は仲間達のセリフに励まされ、隠居する坂井を訪れる。

「自分のように遠回りせず、ハッカーを育てる方法があるはず」

そう語る是枝は、今度は自分と新しい大陸を目指そうと坂井を誘う。

社会不適合だった天才ハッカーは、エンジェルと出会い、世界を変える航海にでた。

今度はエンジェルがハッカーの船に乗る番。2人は新たな航海へ。再び大海原へと漕ぎだす。

END

ただの漫画ではない?「実際に起きた」サイバー事件の事例

『王様達のヴァイキング』は、現役エンジニアの綿密な技術監修によって制作されています。

「現実世界で近い将来に起きてもおかしくない出来事を漫画にしていこう」と技術的なリアリティをとことん追求した結果、

漫画がでてから似たような事件が起きたり、脆弱性が見つかったりということもあったそうです。

政府機関HPページ改ざん事件

1巻に登場した「政府機関のHP改ざん事件」は、2000年代に相次いで発生し、現在も国内外さまざまな省庁や大企業がターゲットにされています。

  • 科学技術庁のHPが、日本人への侮蔑とポルノサイトへ誘導する内容に改ざん(2000年1月24日)
  • 総務庁、運輸省、人事院、宇宙科学研究所、国際観光振興会などでデータの消去およびHP改ざん(同年1~2月)

これに関しては狙われたら最後、サーバの脆弱性や管理者へのなりすましによって簡単に行われてしまいます。

『大金持ちの家が、貧弱な鍵しかかけていなくて泥棒に入られたようなもの』という表現がとてもわかりやすいです。

参考サイト:http://www.gabacho-net.jp/whims/whim0031.html

工場へのサイバー攻撃

利用者のシステムに鍵をけけて、解除のため身代金を要求するウイルス・ランサムウェア。

作中でも工場がターゲットになったように(2巻)、世界各国の製造業が標的にされています。

工場は製造ラインの停止によって多大な損失を抱えてしまうため、「なんとか早く復旧しなければ」という心理を利用して圧力をかけるのです。

ランサムウェアは、技術力のない犯罪者でも簡単にフィッシングメールなどで送りつけられることから、手軽に「ゆすり」ができます。

身元不明のファイルやメールは安易に開かないように注意しなければなりません。

対策としては感染前に防ぐこと。AIセキュリティを使って自動検知するなど、ランサムウェア感染を未然に防いでいる実績は多々あります。

コンビニATM不正引き出し事件

ATMをターゲットにした攻撃は毎年、世界中で問題になっています。

主な手法はスキミングですが、2014年にはマルウェアを利用してATMから際限なく現金を引き出す手法が発見されました。

作中でも使われたように、OSの脆弱性を狙ったハッキングは常に行われています。

仮想通貨取引所へのサイバー攻撃

17巻で登場した仮想通貨取引所へのサイバー攻撃は、2018年に起きた「コインチェック事件」が元ネタといわれています。

国内大手の仮想通貨取引所であるコインチェックが不正アクセスに遭い、約580億円分の仮想通貨が流出しました。

原因は通貨の管理をインターネットから切り離された"コールドウォレット"ではなく、接続された状態の"ホットウォレット"で管理していたことが問題だといわれています。

コインチェックは被害を受けたおよそ26万人に補償をしました。その後、コインチェックはマネックス株式会社によって買収されています。

『王様達のヴァイキング』のモデルになったすごい人達

Googleで働くエンジニアたち

さだやす先生が本作を描くきっかけに人たち。

編集者に「さだやすさんが描くブッ飛んだ天才が見たい」と言われたころ、『プロフェッショナル 仕事の流儀』にでてきたGoogleで働くエンジニアたちをみたことが『王様達のヴァイキング』を描くきっかけになったそう。

エンジェル投資家のモデル・小澤隆生さん

坂井のモデルになったのは、楽天・ヤフーなどのIT大手で役員を務めた小澤隆生さん。

名だたる有名会社の取締役を務め、エンジェル投資家としても有名な方で、個人で数十社に投資されています。

「え!こんな人実際にいるの?」というくらい強烈なキャラクターだそう。

自宅に地下室があったり、実際に取材・協力をしていて、随所にリアルなエピソードが使われているそうです。

「ヘッジホック」の元になったベンチャー企業

坂井の投資先であり、是枝とも熱い友情を育んだ「ヘッジホック」社の面々。

これは、2014年にヤフーに吸収合併された「株式会社クロコス」といわれています。

少人数のエンジニアと起業家の「なんか一緒にやろうよ」で生まれた会社。創業エピソードはこちらで読めます。

あとがき

「王様達のヴァイキング」はエンジニアやベンチャー経営者目線で読んでも面白いと絶賛されていました。

そのくらい細部まで作り込まれたリアル×フィクションの素晴らしい作品だと思います。

漫画の枠を超えて、5G時代にセキュリティの複雑さと重要性を説く啓蒙書といえるのではないでしょうか。

ハッカーに興味ある人もない人も、ぜひ読んでみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!