目次
20位~1位
20位 どぶがわ
汚くて臭がひどい川のほとりで、ベンチに座ってうたた寝する老女。果たして彼女のみる夢とはー?
夢と現実が交錯する、川沿いに住む人々を描いた群像劇。
近所ですれ違うような、おぼろげな人間関係が編み込まれて、少しずつ物語の形を作っていきます。
絵本のようなイラストで、人間の孤独にそっと寄り添うなような温かいお話。
19位 愛を喰らえ!!
男を嫌悪し、他人に嬲られ、自身を傷つけて生きる女たちの群像劇。
性の残虐さを浮き彫りにして、女たちの心奥深くにある絶叫を殴り書きしたような強烈な作品です。
妙に現実味があって、心を強く保っていないとその空気感にひきずられそうなほど。荒々しい絵柄が女たちの感情を助長しています。
18位 ストロボライト
小説家・浜崎正は、夜行列車で原稿書きながら、大学時代に出会った映画のヒロインにそっくりな少女・ミカを思い出すー
過去を回想しながら現代を顧みる、人生の分岐点を描いた青春ストーリー。
終始物悲しい雰囲気がつきまとうのは、誰もが経験する過去の後悔や挫折が色濃く残るからかもしれません。作者のご冥福をお祈りします。
17位 山羊座の友人
高校生の松田ユウヤはある夜、いじめにあっていた同級生・若槻ナオトが殺人を犯した現場に遭遇する。いままでいじめを見ぬ振りしてきた罪悪感から、松田は若槻の命を救うことを決心するがー?
ベランダに流れ着いた未来の日付の新聞からはじまる、高校生たちの逃走劇を描いたSFサスペンス。
原作は乙一先生の短編小説で、読み応えのあるストーリーと最後に全てが繋がる感覚にゾクッとします。
16位 神様がうそをつく。
東京から転校してきた小学6年生の七尾(ななお)は、新しい環境でなかなか上手くいかない。
そんな時、大人びたクラスメイト・鈴村理生(りお)の、誰にも言えない秘密を知ってしまうー
小学校最後の夏、子供ながら精一杯大切な人を守ろうとする小学生の2人の、切ない青春ストーリー。大人こそ読まなければいけない作品です。
15位 りとうのうみ
離島で暮らす少女と、島の人々の温かな交流を描いた短編集。
美しい青で描かれる海と空、カラーで描かれた離島の風景に心から癒されます。
都会人が読むと、すぐにでも沖縄に行きたくなる魔力を秘めた一冊。癒し系BGMのように、夜寝る前に読むといいかも。
14位 蝶のみちゆき
幕末・明治の長崎丸山を舞台に描いた、1人の遊女の物語。
身を焦がすような恋の果てに、なぜ彼女は廓に戻ってきたのか。
静かなトーンで描かれた花魁漫画の傑作です。高浜寛先生の表現力はもはや芸術。
遊女を描いた漫画はたくさんありますが、遊女の本質や、男と女の本音が身に沁みる作品です。
13位 惑星9の休日
辺境の小さな星・惑星9に暮らす人々の日常を描いたSFドラマ。
壮大なSF設定に反して、特別なことは何も起こりません。ただシンプルな絵柄で、そこに生きる人々の感情が浮き彫りにされたような作品。
惑星9=地球ではないのに、なぜか胸を締め付けられるノスタルジーを感じます。
12位 虫と歌 市川春子作品集
ヒトの形をしているけれど、ヒトじゃない。でも人間よりもずっと繊細で、優しい生き物たち。
『宝石の国』の市川春子先生が描く、静かな物語が4作品収録されています。
人間中心で生きていると、虫や星、自然の懐の深さを実感せずにはいられません。
人間に振り回されて、それでも優しく寄り添ってくれる姿が印象的。一度作者さんの頭の中をのぞいてみたい。
11位 キス、絶交、キス
真面目な女の子と、ヤンチャで人気者の男の子。お互いに相手のことが気になるのに素直になれないー
現代の少女マンガにはない、"生々しい思春期"と"初恋"を描いた名作。
小5~中3という多感な年頃の男女それぞれの視点から描かれていて、お互いの心理が痛いほど伝わってきます。
読んでいる方が「うわー///」とむずがゆくなってしまうような青春作。
10位 TESORO―オノ・ナツメ初期短編集
"人間味"のある短編やショートストーリーが詰まった人気作。
イタリアや江戸時代を舞台にした作品が多いオノ・ナツメ先生ですが、現代を舞台にした短編が収録されています。
シンプルにみえてハイセンスな絵柄は、言うなればピカソのような。本当に人間をよく観察しているのが伝わってきます。
9位 11人いる!
宇宙大学の最終試験。その内容は、10人のチームメイトと漂流する宇宙船で53日間生きのびることだった。ところがタダが乗り込んだ宇宙船には、なぜか1人多い11人の受験生がいる。お互いに疑心暗鬼になりながらも、試験合格のため、11人は規定の53日間を過ごすことに決めるがー
宇宙船という隔絶された空間の中で、様々な人種・文化・性格を持つ11人がぶつかり合い、困難に挑む姿を描いたSFサバイバルの金字塔。
疾走感のあるストーリーにハラハラドキドキ。無駄なコマはひとつもないと断言できるほど密度がすごいです。
いまあるSF作品の元ネタはほぼこの作品から作られたのではないか。
8位 蛍火の社へ
幼い頃に一緒に遊んだ不思議な少年。触れたい、けれど触れられない。
やさしい妖と少女の出会いを描いた切ない恋物語です。
文字通り「ずっと一緒には生きられない」2人のひと時を、最後まで温かく描ける緑川先生に脱帽です。
何度読んでも最後で涙腺崩壊。アニメも最高でした。
7位 手紙物語
中世ヨーロッパ、昭和の日本、果ては宇宙まで。「手紙」をテーマにした傑作5作品を収録した1冊。
表紙から"現代風の心温まるお話"を想像しますが、ページをひらくと予想外に壮大な世界が広がっています。
ミステリーや推理要素のある作品もあり、最後まで目が離せません。
6位 竜のかわいい七つの子
竜、人魚、魚の神様、絵から飛びだす馬...人外と人間の心温まるお話から、人とはちがう人間たちのハートフル&コメディまで。
作品を読むたびに、九井諒子ワールドに飲み込まれていく傑作短編集です。
深いテーマをそうとは感じさせない話作りの天才。最後のオチまで完璧です。
5位 金の国 水の国
昔から仲の悪い金の国と水の国。ある日見かねた神様は、A国は国で一番美しい娘を嫁に、B国は国で一番賢い若者を婿にやって仲直りするように言いますがー
中世の世界観で、2つの国の歴史を綴ったおとぎファンタジー。
偶然出会ったA国の姫とB国の青年が鍵となるのですが、国同士の陰謀あり、切ない邂逅あり、ときめく恋あり。
あらゆる感情を揺さぶられる究極の物語です。
4位 Forget-me-not
水の都・ヴェネツィアを舞台に、名探偵だった祖父の遺言により、謎の怪盗"ベッキオ"を追う探偵・伊万里マリエルの叙述譚。
雰囲気ある街の描写と、怠惰でお気楽な探偵マリエルの飄々とした振る舞いに、読めば読むほど味のあるお話です。
深まる謎、怪盗ベッキオの秘密、とある弟子の秘密。
繋がっていないようで実は伏線だらけ、という隠れた名作。
3位 長い道
女にだらしがないのに、どこか憎めない夫と、マイペースな妻の日常を綴ったショートコメディ集。
妻を質にいれようとしたり、堂々と浮気したり...。端から見れば最低な夫なのに、妻もタダでは起き上がらない。
この夫婦の何とも言えないバランスは、最高に居心地がいいのです。
2位 ひきだしにテラリウム
SFを土台にファンタジーや日常ものなど、クスッと笑えるショートストーリーを集めた珠玉の一冊。
細部まで趣向が凝らされたギミックと、くるくる変わる絵柄は万華鏡のよう。
数ページの中に驚くような仕掛けが込められていて、作者の発想に感動します。
1位 星守る犬
職も家族も失った"お父さん"は、一匹の飼い犬・ハッピーとともに故郷を目指して、ボロボロの車で旅に出るー
1人と1匹の最後の旅を通して「生きること」について考えさせられます。
犬の視点からみた人間を描いており、ハッピーの無邪気なモノローグに涙が止まりません。
どんな年代の人が読んでも、一度読んだら忘れられない作品です。
スピンオフの続編もありますが、この物語はこの1冊で完結しているような気がしています。
あとがき
1巻完結だと短編集やショートストーリーが多くなりがちですよね(もちろん短編も面白いんですが)
今回は1冊でストーリーがしっかり作り込まれた名作もたくさんあるので、ぜひ読んでみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!