2015年〜2020年に渡って連載された『私の少年』が全9巻で完結しました。
30歳のOL・聡子と、12歳の少年・真修の禁忌の交流を描き、 多くの読者を清純派おねショタの世界に引きずりこんだこの作品。
今回は、聡子と真修が最後にどうなったのかを、感想・考察を交えてご紹介します。
※最新刊までの情報がネタバレしていますのでご注意ください
これまでのあらすじをおさらい
東京のスポーツメーカーに勤務する30歳のOL・多和田聡子は、夜の公園で早見真修という12歳の小学生と出会い、ふとしたことから彼にサッカーを教えることになります。
真修の複雑な家庭事情を垣間見た聡子は、プールやお寿司に一緒に行ったりとサッカーの練習以外でも交流を持つように。
聡子自身も元恋人からの残酷な仕打ちや、家族との確執から真修と過ごす日々に安らぎを感じるようになっていきました。
しかし、お互いに過ごす時間を特別なものと感じ始めた矢先に、聡子の取引先でもあった真修の父親に二人の関係がバレてしまいます。
父親の怒りをかった聡子は仙台の支社へ移動となり、二人は離れ離れになりました。(3巻/真修10歳・小学生)
2年後、聡子は修学旅行で仙台を訪れていた真修と偶然再会します。
聡子にLINEのIDを渡す真修。聡子に会いに来ようとする真修を「社会の目」に苦しむ聡子は静止します。
東京で会うことになった二人ですが、待ち合わせに遅れた聡子を迎えてくれたのは昔と変わらず優しく自分に手を差し伸べる真修の姿でした。
聡子は東京へ帰ってくることを決意します。今度こそ真修を守りたいと願う聡子に対して、真修は「聡子さんにすきって言っちゃだめなんですか」と告白します。(5巻)
聡子に失恋したと落ち込む真修でしたが、聡子の妹・まゆこからアドバイスを受けて、これからは聡子自身を知っていこうと決意します。
一方の聡子も、大人として真修を救いたいという想いは建前であり、本当はただ真修の側にいたかったのだという自分の気持ちに気づきました。
真修の父親に謝罪して再び真修と会う許可を得たいと思う聡子。元婚約者と母親のトラブルに巻き込まれて苦しむ聡子の前に真修が現れます。
聡子はこれまで誰にも話したことのなかった苦しみを真修に打ち明け、真修は「自分のことを子どもと思ってくれてもいいけれど、聡子が大人になろうと思わなくていい」と聡子を優しく受け止めました。 (7巻/聡子33歳/真修14歳・中学生)
高校生になった真修と聡子は、東京で予定が合えばカフェで合流し、お互いの勉強に励む日常を送っていました。(8巻)
しかし二人の「名前のない関係」は聡子の元カレである椎川や、真修に想いを寄せる奈緒の心を傷つけていきます。
聡子が父親に会って謝罪したことを知った真修は、日曜日に二人で出かける約束を取り付けるのでしたー
ーそして最終巻へー
9巻の最終回は?聡子と真修はその後どうなったのか
お互いに自分の心と向き合う決意をした真修と聡子。前日、真修は聡子と出かけることを父親に話します。
父親は門限を17時と言い、以前聡子の謝罪を聞いたとき"父親として自分に何が残っているのか"とうなだれたことを思い出していました。
デート当日、門限を聞いて食事をすることにした二人ですが、真修が過去のことから「回転寿司」にトラウマを持っていたことが判明。
聡子は「なおさら新しい記憶で塗り替えないと」と言い、二人は回転寿司へ。そこで聡子は自分をお母さんのように思ったことはあるか、と真修に尋ねます。
母の記憶をあまり持っていない真修は、聡子の手の温もりを母親のように感じたことがあること、手を繋ぎたいと思ったことがあると話します。
それから二人はいろいろな関係性を想像します。
もし同じ会社で働いていたら、もし二人が同級生だったら。結局どの関係性でも幸せな光景しか描けないことに気づいて、聡子は幸せな気持ちになるのでした。
その晩、家に帰った真修は晩御飯を作りながら、父親と話します。
子どもの頃に真修が聡子に保護してもらったことがあると聞いた父親は、父親として気付けなかったことに落ち込みますが、真修は助けて欲しい時は自分から言えると晴れやかな顔で言います。
その後、真修は菜緒に自分の気持ちを伝え、聡子は過去の自分自身と対話しながら「別に誰かのために強くならなくていい」とようやく自分の弱さを許すことができます。
昔聡子からもらったサッカーボールをどちらが持つか賭けて勝負をすることにした二人。しかし、公園はボール遊び禁止になっていました。
真修と聡子はLINE上で、ボールのパスのようにお互いに質問を投げかけていきます。
聡子は「真修の瞳にうつるわたしが一番すき」と真修に伝え、これからも広がり続ける真修の世界の中で、その目に映る自分を見ていたいと告げるのでした。
最終話、それぞれ花火大会へときた二人は、ラムネを買いながらお互いのことを思い浮かべます。
花火が打ちあがったその時、真修は聡子に電話をかけ、「花火やっと来れましたね」と微笑むのでした。
結局二人は両思いになれたのか
結論からいうと、聡子と真修の関係に恋愛的な名前はつきませんでした。
これまでもこれからも、二人の関係は「ただずっと一緒にいたい」「自分を見ていてほしい」という大切な人を想う関係に。
小学生編で「大人と子供」だった二人が、中学生編で「対等な個人と個人」になり、高校生編でゆるやかに関係を築いたという流れでした。
お互いへの想いをようやく言葉にできた二人は、これからさらに人間同士の幸せな形を見つけていくんだと思います。
とはいえ、どうしても二人に結ばれてほしかった…(笑)
この作品でいちばん結末に影響したのは、聡子の年齢だと思います。
真修が12歳のとき聡子は30歳。若く突っ走るだけの年齢ではなく、社会に揉まれて大人としての辛苦をある程度経験し、成熟してきた(または疲れきった)ちょうど良い年齢です(おい)
もし聡子が新卒で苦しむOLだったら、二人の関係はもっと簡単に恋愛へと向かっていったのではないかと思いました。
8巻で、真修にずっと想いを寄せる菜緒が聡子に「真修を好きなのか」と問うエピソードがありますが、聡子は大人としてのキレイごとを並べつつも真修が好きであることだけははっきりと否定も肯定もしません。
真修の思いは5巻の告白から、大人としてではなく個人としての聡子が好きだと作中の中ではっきりしていきます。けれど聡子だけは最後まで「好き」とは決して言わないのです。
これは二人の関係性をかなり真面目に考えた結果なんだろうなと思いました。
二人の関係に名前は付きませんでしたが、二人が本質的に惹かれあって「大切な人」になったという、当初からは想像のつかない結末でした。
あとがき・感想
1〜3巻までのストーリーがわかりやすくおねショタ的な要素を含むと考えると、4巻からの心の動きはとても複雑で、非常にドラマに深みがありました。
作者さんが何かのインタビューで「子どもには何があっても大人が手を出してはいけないという倫理観があって、歳の差恋愛モノをものを描くつもりではなかった」と言っていたので、最初から恋愛ものではなかったのかもしれません。
ただ漫画の世界だからこそ、二人の気持ちに目に見える形の救いがあってもいいのに…と思ってしまいました。
最近は漫画に対して「現実ではありえない!」と批判的な感想を言う人が増えていて、漫画の見方も変わってきたのかなと思います。
漫画も小説も創作物として、フィクションだからこそカタルシスを得られるモノだと思っているのですが。この作品は多くの人に読まれたからこそ難しかったのかもしれませんね。まぁ実質両思いみたいなものですけど。
最終話までの流れは一読しただけではわからないほど繊細な心の機微にあふれていたので、これから読む方はぜひ一気読みして見てください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。